🥀Das Schloss des Todes🥀
第1章 mein Prinz
「人間以外なら、何でも作ったり、操ったりする事が出来るよ。」
「.....何でも?」
「そう。何でも作れるよ。」
するとお兄ちゃんは再び杖を一振りした。
空だった屑籠がユーロ紙幣で一杯になる。
私は思わずその一枚を手に取った。
間違いなく本物だった。
「大概の事は出来るよ。ただ人間を作る事は出来ないから、今までと同じ生活をずっと続けていく事は無理があるね。」
「......ご、ごめんなさい。どういう事?」
「この力で僕はリビングで死んだ父さんを消したけど、世間一般的には行方不明っていう扱いになる。母親は他界して父親も行方不明。だけどその子供達は無一文になる事もなく、今までと変わらず家賃や学費を支払いながら夢に向かって大学進学までしていたら.....不審に思われないかな?」
「お、思う...。親が居ないのに変だよ。」
「そうだよね。今後この世界で生きていくには、僕が就職して、クララがバレエ学校に通い続けるのが一番無難かな。それでも消えた死体の問題は解決しないから、捜索が打ち切りになるまで何年も待たないといけないね。」
「......警察が何回もこの家に来るの?」
「絶対出てこない死体の手がかりを探る為に来るだろうね。堂々としていればいいけど、クララは嫌だよね?」
「い、嫌。も、もう早く忘れたいのに何年も探られるなんて耐えられない。それに自分だけバレリーナになるなんて事はしたくない。」
「......ごめんね。魔法を使えるのに、クララの一番叶えてあげたかった夢を叶えてあげられない。」
しょぼんと肩を落としたお兄ちゃんに私は、ブンブンと首を左右に振って否定すると口を開いた。
「例え有名なバレリーナになれたとしても、その隣にはピアニストのお兄ちゃんが居なければ、何の意味も無いんだよ」と。
「クララは優しいんだね。」と言ったお兄ちゃんの顔は酷く寂しそうだった。
優しいのはお兄ちゃんの方だ。
お兄ちゃんだってピアニストになりたかった筈なのに、そんな気持ちをおくびにも出さないのだから。