🥀Das Schloss des Todes🥀
第1章 mein Prinz
何できちんとお兄ちゃんに確認しなかったんだろう。
波のような後悔が押し寄せたのは、それから更に2週間が経過してからの事だった。
お兄ちゃんに打ち明けたその日から、パパが私の寝室に来る事は無くなった。
あんなに毎晩私の部屋に訪れてたのに、どうしたのだろうかと思った。
女性の身体としては未熟で未発達な身体を抱くのが嫌になったのか、それとも気まぐれで飽きたから来なくなったのか、理由は分からなかった。
だが、いずれにしても来なくなったのは良い事だと思った。
その代わり、お兄ちゃんの態度にいくつか異変が見られるようになった。
目の下のクマが出現し、次第に濃くなっていった。
無理して笑っているような作り笑顔を浮かべる事も多くなった。
私がこの前のように誘うと、目を伏せて「ごめんね。」と言って断る。
一番引っかかるのは、「大丈夫?何か無理してない?」と私が聞いても、「何でもない」と話題を逸らそうとする事だった。
毎晩聞こえていたピアノの音色もいつの間にか途絶えてしまった。
丁度、パパが私の部屋を訪れなくなってから、明らかにお兄ちゃんの態度はおかしかった。
徐々に心配が募り、深夜ついに私は、お兄ちゃんの部屋へ訪れる事を決意した。
ドアの隙間から僅かに漏れた光が見えて、遠目からでもまだ起きているんだなって思ったの。
やっぱりピアノの音色は聞こえなくておかしいなと思いながら、ノックしようとした瞬間、私は鳥肌が立った。
お兄ちゃんの押し殺したような声が聞こえたから。
続いて生々しい行為を証明するように、ベッドが軋む音と、抽挿を象徴する乾いた音が私の鼓膜に響く。
どうしてパタリとお兄ちゃんがピアノの練習を止めたのか。
何故、毎晩睡眠不足になったのか。
どうして無理して笑う事が増えたのか。
理由は明白になった。
アイツが私の大好きなお兄ちゃんを犯していたからだ。
次第に唇が震えていく。
覗き見する余裕も忍び足で戻る配慮も無くなって、私は駆け足で自室へと戻っていった。
違う。
私はお兄ちゃんを身代わりにしたかったんじゃない。
違う、違うのに。
止めどなく溢れる涙で枕を濡らしながら
私はお兄ちゃんに「助けて」と言った事を
死ぬ程後悔したのだった。