狂炎~狂った情炎に焼かれて~
第1章 序章~悪夢の始まり
「じゃあそろそろ予約している居酒屋に行きましょうか?皆さんすでにお待ちかねですよ」
どうやらまだ来たばっかりで地理に疎い俺を心配してくれた藤見に連れられ、歓迎会の会場の居酒屋まで案内される。
「やあ、藤見先生、ウチの悪ガキがお世話になっています」
「いえいえ…」
そこまで広い町でない分、保護者と会う機会も多いのか藤見は担当しているクラスの生徒の保護者に鉢合わせになり挨拶を交わす。
「そちらの方は?」
「私は今年度から赴任して来た、日色 蓮と言います、数学を担当してます、どうぞよろしくお願いします」
話が俺のほうに振られ、初対面の保護者に折り目正しく挨拶をする。俺の物腰柔らかい態度に保護者は表情を柔らかくした。
「いえいえ、手の掛かる息子ですがよろしくお願いします」
保護者は俺に頭を下げ、一緒に来ている同僚の元に向かった。
「じゃあ、俺達も行こうか…」
「はい」
藤見は俺を予約している席に案内する。
「藤見先生、日色先生…お疲れ様です…先に頂いてますよ」
現代文の佐藤が遅れてやった俺と藤見の席を空ける。俺は佐藤の隣に座り、藤見は俺の隣に座った。
「日色先生はお酒飲めますか?」
「それなりに飲めます」
俺はビールと焼き鳥を注文する。酒には結構強い自信がある、ただそのせいで大学生時代、飲み会のたび酔い潰れた先輩、同級生、後輩の面倒を見せられた苦い思い出がある。さすがに成人した教職員達の飲み会だから大学の時の飲み会みたいな惨事にはならないだろう。
「……んっ…」
運ばれて来たビールを一気に飲み干し、焼き鳥を口に運ぶ
「そういえば日色先生は結構がっしりしてますけど、何かスポーツしてました?」
佐藤が俺の身体を見て呟く。
「ずっと陸上部でした」
「へぇ…」
佐藤はおつまみを口に運びながら俺をじろじろ見る。
「へぇ…日色先生は学生時代はさぞやモテたんでしょうな」
「さあ?それはどうなんだろう?」
確かに女性から何度か告白されたことはあったが、茜以外の女性に興味を持つことがなかったため、あまりモテるかどうかを気にしたことはない。オシャレに気を使うようになったのも小学生の頃、茜が好きだった近所の高校生に寄せるためだ。