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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第3章 認めない

ピンポーン 突然インターホンが鳴った。

「こんばんわ~」

リビングの扉が開き 入ってきたのは紫優くん
だった。


はぁ?! 何しに来たんだ、コイツ…!

青筋を立てて 紫優くんを睨みつける。


紫優くんは私に構わず、ソファーで寛ぐ お父さんを見つけ、話し始めた。

「翔(しょう)さん。お借りしてた本、返しに
来ました♪」

「お? わざわざ? どうせ詩史に会いに
来たんだろ?」

「翔さんに会いに来たんですよ。今日、お休みだって言ってたじゃないですか!」

「よく 覚えてたなぁ!♡」


嬉しそうな お父さんに げんなりしつつ、
私は 黙々と作業を続ける。

「紫優くん 晩ご飯まだなら ウチで食べて
行けば?」

お母さんの突然の提案に

「はぁ?!」
私は 怒りを露わにする。

「いーじゃないの♡ どうせこんなに食べれないし♡  今日は詩史が作ったのよ?」

「え…っ! 食べたい!」

紫優くんが目を輝かせて 反応する。


紫優くんへの怒りをぶつけた料理を 
紫優くんが食べる…

… 何か もぉ どうでもいいや…

私は諦めて また 口を噤む。




そうして4人で食卓を囲む。

「いただきます!」

丁寧に手を合わせて 紫優くんが食事を始める。

紫優くんは 食べ方がとてもきれい…。

紫優くんのお母さん、夏葉(なつは)さんの躾が
よく現れている様に感じる。

「美味しい…!」

紫優くんは 目を瞑り 震えている。

当たり前よ! 私が作ったんだから!
と、思いつつも 
喜ばれるのは 単純に嬉しい…。

そう言えば… 
紫優くんはいつも 私が作ったモノを 喜んで
食べてくれる。


「詩史 天才!」

目を輝かせて言われると 満更でもない。

「そ… そう?」

危うく昼間のファーストキスを許しかけて…

ハッ! いかん いかん! 
私は頭を横に振る。

そう… コレは紫優くんの作戦だ。
この笑顔で ほぼ全ての人が 陥落させられている。

私は 絶対に こんな事では 許さない!!

キッと気持ちを引き締め直す。

紫優くんは そんな私の気持ちを見透かした様に
にっこり微笑む。

まるで… 
簡単に警戒心を解かない猫と 手懐けたい飼い主
の様…。


「ご馳走様でした! 本当に 美味しかった…♪」

紫優くんは きれいに 食べ切った。
よく食べたな…

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