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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第32章 夏の気配

「嬉しい… 詩史から 誘ってくれるなんて…」

「…っ」

ワザと…!
紫優くんは 私のうなじに 唇を寄せる。

吐息が…  擽ったい…!!


「は… 離して… 暑い…!」 

涙目に… 弱々しく告げると
紫優くんは 珍しく すぐに 離してくれた。

でも 手を 捕まれて…
その手は 紫優くんの 口元へ…


「詩史が大丈夫なら…  行きたい…!」

どこぞかの 王子様の様に…
私の手の甲に キスを落とすと
眉毛を下げて 上目遣いに見てくる。


ドキッ…!

潤んだ 視線…

絶対に ワザと やってる…!


コレに堕ちる被害女性の なんと 多い事か…!
その手には 乗らないんだから…!


そう 思うのに…

ちょっと可愛い… って 思っちゃう… ?


「…っ  … 行く?」

「うん!嬉しい!!!」

私の誘いに… 
紫優くんは コレでもか! っていうくらいの
眩い笑顔を 私に 向けた。

ズキューン!


私の胸に 何かが 刺さった。

まるで 心に 麻酔でも 打ち込まれたかの様な
ふわふわした感覚に 陥る。

じんわりと 感覚をぼやかしながら
身体全体が 甘くマヒする。


「???」

顔を赤くしたまま 自分の身体の反応に 戸惑った。


「…詩史にも やっと 効く様に なったね♡」

紫優くんが クスッと 笑い掛ける。


「?」

何が…?
紫優くんの 言ってる意味が よくわからない。

でも 紫優くんの言葉以上に
「自分」 が よくわからない。


「ヤバ… 
嬉しくて めちゃくちゃに キスしたい…!」

「?!」

紫優くんの言葉に慌てて… 
今度こそ 逃げる様に 家に帰った。


「じゃあね。」


家に着いて ドアノブに手を掛けた所で

紫優くんに 抱きしめられた。


「は…? 何??」

「さっき言ったじゃん… キスさせて?」

紫優くんの 言葉に 呆れる。

「はぁ? 散々シタでしょ!」

さっき 教室で あんなに… 
ごにょごにょ…(恥)


「だめ? 俺 ちゃんと 待て したよ?」

紫優くんは また ワザとらしく ウルウルした
目を見せる。

無い筈の ワンコの耳が 垂れて 視える様だ。


「…っ」

可愛い…! ?


顔を赤くして また 固まってしまう…。


何で…?!

振り切って 家に 入る事も 出来るのに…

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