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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第38章 逃走

クラスの皆の方が そわそわと 
状況の整理が つかない様子だった。

悠理くんは 放心状態だし

晶ちゃんは 重症で 保健室に運ばれた様子だ。

申し訳なく 思いつつも…


残念ながら… 
私の優等生としてのプライドは 
こんな事では 崩さない。

直ぐに 修正 修復… 
最高のパフォーマンスを 常に怠らない。

私はこうして 今の地位を 確立してきたし
紫優くんを 悔しがらせて来た。

今回だって 同じ事…
紫優くんの 手の内に 操られるだけ なんて
プライドが 許さない。

寧ろ さっきの意地悪に 苛立って…

私を 益々 冷静にしてくれる。


大人しく 捕われて なるものか…!
このまま…
家まで 逃げ切れる…!


ホームルームが終わると同時に
私は直ぐ様 教室を飛び出して 逃走した。


バスを待っている間に 
紫優くんに捕まる事を 危惧して… 
帰りも バスを使わずに 家を 目指した。


賑やかな 駅の周辺を 通過して
住宅街に入ると 少しずつ 警戒を解いていく。

家が 見えてくると
紫優くんから 逃げ切れた事に 安心しきって…
安堵の ため息をついた。


ふぅ… 

緊張を解き放った 瞬間に 

ふわ…っと 後ろから 抱きしめられて…


安堵から一転 一気に 血の気がひいた。

「…っ」

ごくっ と 息を呑む。


「詩史… 逃げるな…」

紫優くんの 低い声に 
身体が 縛り付けられる感覚に なった。


そんなに 強く 抱きしめられては いない。

本当に嫌なら 振り切れる。


でも…


私は 項垂れて… 観念した。


「追いかけっこは もう 終わり?」


紫優くんの言葉に 
静かに 頷いた。


「… 私の 負け だね…」

敗北を 認める。


「…もう 家だから
殆ど 詩史の勝ち だよ…?」

紫優くんの声が… 

温もりが 甘くて…
私は この場から 逃げられなく なった。

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