テキストサイズ

飼い猫 🐈‍⬛🐾

第44章 罠

愛茉ちゃんのファンが
愛茉ちゃんのダンスを 楽しみに待つ このステージに
独りで 立たされた。


愛茉ちゃんでない者が ステージに立っている事が
わかると、観客席からは動揺の ざわめきが 聞こえる。 中には 罵声も…


観客の反応は 当然だ。
何で こんな事に なってるのかしらね…?

観客の反応に 同情する様に 笑い掛けると
若干 空気が 変わった。


皆を巻き込んで 悪いけど…
売られたケンカは 買う主義なので ゴメンネ!


曲がかかると…

聞き覚えのある曲だった。

今 ダンスがカッコいいと バズリ中の
アイドルの曲…!


成程…! 
皆が知ってるこのダンスで 踊れなくて
大恥をかけ… と!


イラつく…!


この曲なら… 私は踊れる!


紫優くんが乱入してきて 
ダンスの教室は辞めちゃったけど…
その前はバレエもやっていたから 
ある程度の基礎はあるし、
今は動画でも沢山教えてくれる。

踊る事自体は 大好きで
誰に見せる訳でもなく 自分のストレス発散に
練習してきた。

まさか 思いもよらず こんなステージで
ダンスを 披露する事になるなんて 
思わなかったけど…。


動き出すと… 
身体が ぎこちない…!
緊張して… ガチガチ…!(笑)


眼鏡を外して… 視界をぼやかす。
曲に 集中していけば
それなりに 動ける様になって 安心する。

少し 色っぽいこの曲は 髪をかきあげたり
私を 見て…!って感じの曲だから…
恥ずかしがると この曲の雰囲気に 合わない。

髪を振り解いて
全力で 「私を見て!」って アピールする。


観客の雰囲気も 段々… 
手拍子や 温かい雰囲気に変わってきた。

無我夢中で 踊り終えると…

拍手と歓声が湧き上がった。


踊れた… ?


ほっ…と するのと同時に 
まだ 気が抜けない と 掌を握る。

振り返って ステージを降りると
愛茉ちゃんが 青ざめた顔で 私を見た。


「何で 踊れるのよ…! 
大恥かかせてやろうと 思ったのに…!」


何だろう… 
何だか愛茉ちゃんが 憐れに思えるし
もう あまり 関わりたくない…


無言で 立ち去ろうとした処に
人混みを掻き分けて 紫優くんが この場に
現れた。

私を見つけると ぎゅっと 抱きしめて…
それから 愛茉ちゃんを 睨みつけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ