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「詩史！」

突然　紫優くんに
強い口調で　名前を呼ばれて　驚く。

紫優くんの眼は　ふざけていなかった。


「今　ここで　詩史が逃げたり　拒否したら…
俺を　真剣に想ってくれる子達に　申し訳ないと
思わない？」

紫優くんの　強い眼差しに 　　怯む。


「詩史が　いつも　言う事だよ？
『１人１人の　真剣な想いを　何だと思ってるんだ！　
真面目に　向き合え』って…」


…確かに　言う。

けど
皆の前で　キスを しなくたって　いいのに…
こんなの…　私からしたら　公開処刑だ！


「それとも　詩史の　気持ちは
その程度　なの…？」


突然…
紫優くんが　傷ついた顔をした。


「俺は　いつでも　詩史に対して　真剣だよ…？
詩史は…　違うの？」

悲しそうな顔に…　　心が痛む。


「…そんな事　ない…！」

そんな事　ないよ！
私だって…　ちゃんと　真剣だよ！！


「じゃあ　皆の前で　誓ってよ。
山崎さんや　皆に　納得させてよ！
詩史が　俺のモノだって　証明して　みせて？」


…っ

グッと　奥歯を　噛みしめる。


逃げられない。　逃して　貰えない。


「大量の失恋者を出して…
紫優くん　地獄に落ちるよ？」

「詩史が一緒なら　どこだって　天国だよ♡」

紫優くんの笑顔に…　呆れる。


この人は…　そんなに　私と　居たいのか…。
ただ　生まれた日が一緒で
ただ　家が　隣だった　だけなのに…

今となっては…
その　偶然ですら
紫優くんが　謀ったモノなんじゃないかって
思っちゃうよ。

でも…


紫優くんを見上げて　頰に触れる。


私だって…

「他の誰にも　渡したくないよ…」　

紫優くんに　真っ直ぐに　伝える。


悔しいけど…　紫優くんの勝ちだよ。


紫優くんは　一瞬　驚いた　顔をしてから
微笑んだ。

「うん…」


幸せそうな　顔しちゃって…
…　しょうがないな…。


紫優くんに　顔を　近づけて…
皆の前で　そっと　誓いの　キスをした。


ぎゃああああ…

悲鳴が　聞こえる。


私は　何人もの子に　恨まれて　いるだろう。

でも　それは
付き合ってなかろうと　婚約していようと
関係ない。

紫優くんが　私を　離さない限り
恨まれる対象である事は　変わらない。