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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第9章 暗転

朝起きて…

隣の家とはいえ 
いきなり紫優くんを 呼び出す勇気が 持てなくて…
私は いつもより早く 登校する。

紫優くんと向き合うと 決めたのに…

改めて 2人きりになると思うと 気まずい。
何から話していいのか わからない。



こういう、素直にならなきゃ いけない場面は 
今までも 有った。

例えば… 心無い事を言って 傷つけたり、
言い過ぎちゃって 気まずくなったり…。
あの時の謝罪も 勇気が要った。
でも
紫優くんは いつも 笑って 許してくれた。


今回こそは… 笑ってくれないかも しれない…。
そう 思うと 震えて…

「…っ」 

私は 初めて 紫優くんを失うかもしれない恐怖を 感じている。

私らしくない…! と
何度も自分を 鼓舞する。


そんな心の変動を 何度も繰り返しながら
歩いていたら

不意に 誰かに 体を押された。


本を両手で抱きしめていた私は バランスを崩して 階段に投げ出され 落下していく…。

スローモーションに 手から 本が飛び出して
その向こうに 私を見下す女子の姿を見た。

その目は とても冷たくて…
背筋を凍らせながらも 目線を反らせなかった。

あの子は…


「詩史…!」 
紫優くんの声が聞こえて 

次の瞬間 落下の衝撃を庇う様に 抱き留められた。 


「っ痛ぇ~…!」 

紫優くんの 呻き声が聞こえて…

私は慌てて 下敷きになっていた 紫優くんから
体を 離した。


「大丈夫か? 詩史…!」

紫優くんに聞かれて 顔を上げると…


「…っ!」  ゾクッ

体が 一瞬にして 寒気を帯びた。

紫優くんの頭から 血が 流れた。


「え…!紫優! 大丈夫か?!」
「紫優くん…?! 誰か 先生を…!」

ただ事でない 状況に 周辺にいた生徒達が
騒ぎ出した。

ドクン ドクン ドクン…
心臓の音が やけに はっきりと 聞こえる。

なんで? 紫優くんが… !!!


気分が悪くなってきて…


体が揺れた。


「紫優…」

ふら…っと 体が大きく揺れて 


視界が狭くなる…。





暗い 暗い 世界に 落とされた。

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