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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第9章 暗転

「紫優… くん…」

うわ言を呟くと…

「詩史…?!」

誰かが 私を呼ぶ 声がした。


ハッとして…  目を覚ますと

両親が揃って 私の顔を 覗き込んでいた。 



…あれ?  ここ  どこ?

見覚えのない天井。 家でない事は 確かだ。


「大丈夫か? 階段から落ちたって… 
病院に運ばれたんだ。」

お父さんの説明で 紫優くんを思い出す。

「…ねぇ… 紫優くん は ?
頭から 血を流してたの…!」

私の言葉に 両親は揃って 言い難そうな顔をした。

ドクン…  心臓が大きく 変な跳ね方をした。

やだ…  うそ… だよね…

ドクン ドクン  ドクン …


勢いよく起き上がって お父さんに掴みかかった。

その弾みで 点滴の柱を 派手な音で 倒した。

「ねぇ! 紫優くんは?!!」

涙を零しながら 叫ぶ。


お父さんが 視線を反らしながら 言いづらそうに話し始める。

「あのな、 詩史…」


「あっれ? 詩史、起きた~?!」

ガチャンと 病室の扉が開いて 頭に包帯を巻いた 紫優くんが 笑顔で 登場した。

「…  え …?」

私は 固まった。

「すごい音したけど…? ああ!これ?
詩史ったら 元気だね…!」

くすくす笑いながら
紫優くんは点滴の柱を 起こした。

それから ベッド脇に立って 話し始める。

「びっくりしたよ~! 詩史、倒れちゃって!
俺のは ただの 擦り傷だったのに〜」


紫優くんの説明に
目が 点になる。


… は? すりきず …?


「タンコブ出来てたから 一応 MRIは撮ったけど 問題ナシ! ここは 詩史の眼鏡で鋭く擦って… でも 浅いから 大丈夫!」

紫優くんの にこやかな 説明を 放心状態で
聞く。

「全く! かすり傷1つ、無いのに 
このまま 詩史が 起きなかったら どうしようかと 思ったよ!」

お父さんの言葉に ボンッと 顔を赤くする。

… それは 恥ずかしい…!
と俯く。 

「それだけ 心配だったのよね? 詩史?」

お母さんの言葉に  また 涙が滲んだ。


そうだよ。 とても 怖かったよ。

紫優くんの頭から 血が流れて…

今 思い出しても 震える。

『片翼みたいなもんだろ? 失ってもいいのか?』

お兄ちゃんの言葉が聞こえる気がした。

失って…  良い訳 ない…!


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