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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第11章 直視出来ない

恥ずかしさのあまり…

私は 言葉を失い 自分のベッドに 脱け殻の様に 横たわる。


恥ずかしさのあまり…

紫優くんを 見れない。
 
「… 詩史…」

ビクッ !

「…っ!!!!!」

紫優くんに 呼ばれると ビクついて…
布団に抱きついて 縮こまる。

「詩史… それじゃ みんなにバレちゃう…。
っていうか 勘違いされちゃうよ…。
ね? せめて こっち見て?」

「… 無理 無理 無理!!!!
死んじゃう…!!!!!」

私は 布団に顔を埋め、頭を振って 喚いた。


「… 仕方ないな…!」

紫優くんが 立ち上がって
私のベッドに近づき 腰を下ろす。

ドキーッ! 

心臓が飛び出そうなくらい 緊張する。

「詩史… 顔見せて?」


背を向けて横たわる 私の頭を 撫でて 
紫優くんが 声を掛ける。

「詩史の 嫌な事は しないから…。
顔 見せて? お願い…」
 

頭を ひたすら撫でて 私が振り向くまで 
待っていてくれる。
 
「…。」


段々 心が 落ち着いて来て…

恐る 恐る 紫優くんを見る。


紫優くんは 心配そうに 眉毛を下げて 私の様子を伺っていた。

「おいで? 抱きしめてあげる…」

不信感を抱く猫を 
根気強く 安心させる飼い主の様に  
紫優くんは 粘り強く 私に構う。


そこには 今までの様な 作為は感じない。

本気で… 心配してくれているのだと 思う。


「…。」

両手を広げる紫優くんの元に もぞもぞと移動して その膝に 頭を預けてみる。 


「詩史…」

紫優くんの 少し 安堵した様な 声。


紫優くんは それから いつまでも 私の頭を
撫でてくれた。

心地良くて 目が トロンとしてくる…


「こうして 詩史が 側にいてくれて幸せ…
他には 何も 要らないから…
俺の 側に 居て…?」

紫優くんの 切ない声…
バスケ対決した あの時みたい。
悲痛に似た 心からの 叫びに 聞こえた。



紫優くんの温もりと 想いが 私の緊張を
解いていく。


警戒心の強かった猫は 飼い主の 惜しみない愛情に 絆される。


「紫優… くん…」

紫優くんの唇に 私から 唇を重ねる。

それから 顔を見られない様に
首に抱きついて 

「I'm by your side…」

使い慣れない英語で 耳に 伝える。

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