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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第2章 ファーストキス


「倉田さん 逃げ足速い〜」 
「今日こそ 懲らしめてやろうと 思ったのに!」

紫優くんのファン達が 口々に文句を言いながら
校舎に 戻って来た。

大半の生徒は帰宅しているので 
静かな校舎での 話し声は よく響く。


マズい…!
こんな 抱き合ってる所を 見られたら…!

急いで紫優くんから離れる。


「詩史…!」

紫優くんが 突然 大声で私を呼んだ。
まるで 居場所を 知らせるみたいに…

私はぎょっとして… 
思わず紫優くんの口を塞いだ。

背中から 抱き寄せられて…

紫優くんと 密着している所を ファンの子達に
見られてしまった。




「は…?」「な…っ!」 

ファンの子達は私達を見ると 固まった。

「あーあ…! 見られちゃった~☆
詩史が 暴れるから…」

固まる私達をよそに 紫優くんは1人
爽やかな笑顔を振り撒く。


コイツ… 絶対にワザと…!

私は 紫優くんを 睨みつける が 
紫優くんは 気にも留めていない。


「…山崎さん」

「は… はい…!」

さっき 私に詰め寄った山崎さんを 
紫優くんが呼ぶと、
山崎さんは シャキーンと背筋を伸ばした。

「あんまり 詩史を苛めないで あげて?」

「苛めるだなんて… そんな…」

山崎さんは手を口に寄せ 悲しそうな 顔をする。

… 何 そのぶりっ子…。

さっきと全然違う山崎さんの態度に 呆れた。


「そうだね。 山崎さんは 詩史と違って 
人当たり良いし 可愛らしい人だから…
俺の詩史に 酷い事なんて しないよね?」

俺の…

紫優くんのコトバが引っ掛かる。

「はぁ?! だ… んぐっ」
誰が アンタのモノですか!!!!!

そう叫びたかった口を 紫優くんに塞がれた。

「ええ 勿論…。 でも紫優くん、倉田さんは
紫優くんが 嫌いと 言ってるわよ?」

私は 山崎さんの言葉に こくこくと 頷いた。

「うん。知ってるけど… 
詩史は生まれた時からずっと一緒で…
俺にとって かけがえのない子に 
代わりはないから…
ごめんね?」

しんみりと 悲しそうな声を出す紫優くんに
ファンの子達まで 気落ちする。

しーーーーん


何なの これ…
私を 巻き込まないで欲しい…

「…紫優くんは それが幸せなのね…」

山崎さんの言葉に 紫優くんが頷く。

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