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飼い猫 🐈‍⬛🐾

第19章 図書室

「もう 涙も 枯れ果てたわ…。
泣いた所で 皆を楽しませるだけ だもの!」

レンズの 汚れを確認しながら 淡々と 告げる。

と 背中から 紫優くんが ぎゅっと 私を
抱きしめる。


「泣いてる時… 慰めて あげたかった…!
詩史が 嫌がるから 出来なかったけど…。
好きな子が 泣いてるのは 辛かった…!」


紫優くんの 言葉は 不意打ちで…

私の心に ストレートに 入ってきて しまった。

小学校の時の… 
陰口を言われて 泣きじゃくっていた 自分を
思い出す。


『紫優くんが私を 好きだなんて言うから…!
私は みんなと 仲良しに なれない…!』


「…っ!」

じわ…っと 目に 涙が 浮かぶ。

悲しくて 寂しくて 辛かった過去を 思い出す。


「ごめんね 詩史…。 
でも… それでも… 離したく ないんだ…!
本当に ごめん…! 諦めて…」


紫優くんの 言葉に 涙が 流れる。
眼鏡を置き 力なく 告げる。


「紫優くんの ばか…
本当に… 非道い…!」


あの時から 感じてた。
紫優くんは 絶対に 私を手放さない…。


好成績を収めて みんなからの 信頼を得て
ただ ただ 楽しく 学校生活を送りたかった
だけなのに…


紫優くんは 鮮やかなまでに 私の成績を
逆転し、皆からの注目を 奪った。

どんなに 突き放しても 
「俺を見ろ!」 と
私の視界に入り込んできた。

そうして…
『学校のアイドルの視線を独り占め』する私は
皆から どんどん 孤立した。


そんな状況を 紫優くんは 段々 ワザと
作っていった。 

私を孤立させて 弱っていると
必ず 甘い言葉で 私に 迫った。

両手を広げて…

「大好きだよ… 」

紫優くんの言葉が 甘く響く。
紫優くんの 呪縛。


「ごめんね。
でも… 絶対に 離してあげれない。
詩史が居なかったら 気が狂いそう…!」


紫優くんが 首筋に 吸い付く。
私の両手を やっぱり包む。  けど…
今日は 痛くない。


「詩史だけを 愛してる。
だから… 許して…?」


私は 頭を横に振る。 

許さない! 

けど… 

居心地の良さを 知ってしまったの…。
紫優くんの 作戦通りに…



飼い主の 腕に抱かれて… 
外の世界に 出して貰えない 飼い猫は 
静かに 鳴いた。 

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