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病院から帰って　遅お昼を食べて
夕刻…

私は　隣の内海家のインターホンを　押した。

直様ドアが開いて　紫優くんが　出てきた。


「　骨折だって？」

「…ごめんなさい」

紫優くんの　怒りを感じて　素直に謝った。


紫優くんは　1つ　溜め息をついてから
私を抱きしめた。


「愛茉に…　何　言われたの？」

「別に…　何も…」

紫優くんの質問を　無感情で返す。


紫優くんが　そっと髪を撫でる。

何回か　繰り返されると…
少しだけ　瞬冷した筈の感情が　溶けそうになって　慌てる。


「手を傷める程…　愛茉に怒ったんだろ？
そうやって　無感情にならないと　いけない程
心を　傷めたんだろ…？」


紫優くんの　言葉が　手付きが　温もりが…

私の決意を　揺さぶる。


「1人で　抱えないで…？
泣いたら　良いじゃん…」

「　…いや　別に…」

そう　言いながら　　ポロ…　っと　
涙が　流れて…
驚いた。


「周りのヤツらが　何を言おうと　詩史の感情は
正しい。
どんな時も1本　筋が通っていて　
誰にも心を譲らない　強い詩史は　とても　綺麗。
だけど…　
いい加減　彼氏の前では　素直に　なりなよ…」


「ヤメて…！」

紫優くんの　言葉を　否定する。


誰かに　何かを言われて　涙を流すなんて
もう　しない！　って　決めたの！
小学校5年生の時に…

紫優くんに　好かれているせいで
心無い数々の仕打ちと言葉を　浴びて来た。
泣いて　怒って　悔しがるのは　周りを喜ばせる
だけだった。

だから私は…　心を凍らせて　素通りする。


いつも通りの事を　しているだけなのに…

紫優くんは　また　私の心に　入り込んでくる。


「余計な事　言わないで…！」


紫優くんを突き飛ばして　睨む。　
溶けかけた感情は　すぐに凍らせた。


「詩史の　悔しさも　悲しさも　これからは
全部分けて　欲しい…。
いつでも　詩史の　味方で居たい…
昔から　願ってた。　
好きな子が　泣いているのは　辛い…」

紫優くんの　温かな指が　私の頬を撫でる。


睨んでいるのに　視界がボヤケてくる。
唇を　強く結んで　踏み止まるのに…

突き上げてくる　感情を　抑えられない。


「紫優くんの　バカ…！
全部　紫優くんのせいじゃん！」


左手で　紫優くんの服を　乱暴に掴んで　喚く。