
止まない雨はない
第5章 本命とラーメン
「…タカシさん」
「ん?」
「オレをここに連れてきてくださって、ありがとう…」
「ん…、いや…まぁ……ね」
何も言えなくなっているタカシに対して、大将は、笑いながら助け舟を出すように言った。
「タカシちゃん、ほら、お冷。顔が真っ赤になってるよ?」
***************************
『味園軒』からの帰り道、二人は黙ったまま、並んでネオン街を歩いた。
だが沈黙を先に破ったのは、タカシの方だった。
「なぁ…ルカ、尋ねていい?」
「なんです、タカシさん?」
「…アンタ、今、幸せなの?」
するとルカは当然だと笑顔で返した。
「あなたに…会えてよかった…この街で」
診療所の入った雑居ビルに辿りつくと、ルカは下から、ビルの側面に付いた、『山口クリニック』の看板を見上げた。
「ドイツから一時帰国した当初、与えられた時間は三日でした。その間、タカシさんを捜しきれなければ、オレは今度こそ自分の想いを、この顔の傷のように裂いてしまうとろこでした」
「……ルカ」
「確かに今のオレ、忙しくて全然余裕がなくてタカシさんに心配ばかりさせているけど、ここが好きなんですよ。それに…」
「……?」
「このざわざわした空気が、NYで二人で暮らしていた頃に、よく似てると思いませんか?もっとも…治安的にはどうかと思いますけどね…」
ルカは穏やかに笑ってみせた。そんな綺麗な微笑みをタカシはたまらず独り占めしたくなるのだ。
「……………!」
腕のなかにルカを引寄せ、ギュッと抱きしめた。
頬をすり抜ける夜風が心地良い…。
そして、きつく抱きしめてくるタカシの腕のなかも、
日頃の疲れや何もかも憂いも忘れてしまうくらいの幸福感で満たされる。
「…ルカ…キスしていい?」
耳元でそっと囁いてくるタカシに、ルカは鼓動が高くなるのを覚えた。
「……ここではまずいですよ?知らないですよ、噂になっても?」
「…構わないよ、噂になってんのを知らないのは、ルカぐらいさ」
ルカに有無を言わせず、まさにタカシが彼にキスをしようとしたそのとき、
「やーっぱ、ここにいた!」
「……マスター、僕たちだけで店を開けておくのって、無理だって何度も言ったのに…」
鳴海と佐屋がじわじわと詰め寄ってきたのだった。
「ん?」
「オレをここに連れてきてくださって、ありがとう…」
「ん…、いや…まぁ……ね」
何も言えなくなっているタカシに対して、大将は、笑いながら助け舟を出すように言った。
「タカシちゃん、ほら、お冷。顔が真っ赤になってるよ?」
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『味園軒』からの帰り道、二人は黙ったまま、並んでネオン街を歩いた。
だが沈黙を先に破ったのは、タカシの方だった。
「なぁ…ルカ、尋ねていい?」
「なんです、タカシさん?」
「…アンタ、今、幸せなの?」
するとルカは当然だと笑顔で返した。
「あなたに…会えてよかった…この街で」
診療所の入った雑居ビルに辿りつくと、ルカは下から、ビルの側面に付いた、『山口クリニック』の看板を見上げた。
「ドイツから一時帰国した当初、与えられた時間は三日でした。その間、タカシさんを捜しきれなければ、オレは今度こそ自分の想いを、この顔の傷のように裂いてしまうとろこでした」
「……ルカ」
「確かに今のオレ、忙しくて全然余裕がなくてタカシさんに心配ばかりさせているけど、ここが好きなんですよ。それに…」
「……?」
「このざわざわした空気が、NYで二人で暮らしていた頃に、よく似てると思いませんか?もっとも…治安的にはどうかと思いますけどね…」
ルカは穏やかに笑ってみせた。そんな綺麗な微笑みをタカシはたまらず独り占めしたくなるのだ。
「……………!」
腕のなかにルカを引寄せ、ギュッと抱きしめた。
頬をすり抜ける夜風が心地良い…。
そして、きつく抱きしめてくるタカシの腕のなかも、
日頃の疲れや何もかも憂いも忘れてしまうくらいの幸福感で満たされる。
「…ルカ…キスしていい?」
耳元でそっと囁いてくるタカシに、ルカは鼓動が高くなるのを覚えた。
「……ここではまずいですよ?知らないですよ、噂になっても?」
「…構わないよ、噂になってんのを知らないのは、ルカぐらいさ」
ルカに有無を言わせず、まさにタカシが彼にキスをしようとしたそのとき、
「やーっぱ、ここにいた!」
「……マスター、僕たちだけで店を開けておくのって、無理だって何度も言ったのに…」
鳴海と佐屋がじわじわと詰め寄ってきたのだった。
