無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

割り箸を二つに分け、ルカはケーシーの上にジャケットを羽織った格好で、
その大盛りチャーシューラーメンを啜った。

「う……美味い！！凄いな、これ！！」

そんなふうに目を輝かせて食べるルカの顔を満足そうに見ながら、タカシも自分のラーメンに箸を進める。

すると店の大将が湯気の向こうから、ルカに声をかけてきた。

「お客さん、タカシちゃんの“いいひと”だね？」

「…こら、大将！」

タカシは慌てて店の大将の言葉を遮ろうとした。それはまるで照れているようで、
ルカの顔をちらりと見たりする。

「なんだい？今更照れることはねーだろうよ？アンタが初めてこの歓楽街に堺谷さんとやってきたとき、
うちの店に寄ってくれて、同じものを食べたときに、言ってたじゃないか？」

ルカは思わず、何のことだかわからず、タカシを見つめている。

「お客さん…、タカシちゃんはね、アンタに出したこのチャーシュー麺、
当時、凄く美味しそうに食べてくれて、そしてこう言ったんだよ。
“自分の命以上に大事なヤツがいる。そいつにいつか食べさせてやりたいなぁ…”ってね」


大将のその言葉に恥ずかしくて耐えられないのか、タカシはそっぽを向きながら、片手で顔を覆っている。

「……だったよな、カカシちゃん？」


なおも念を押した店の大将に、タカシは仕方ないと思ったのだろう、『ああ』と認めた。
そして照れながら、自分のラーメンだけを黙々と食べ続けた。


そんなタカシを見つめながら、ルカの胸のなかにぬくもりある、キャンドルのような灯りが灯ったようだった。
いつもどことなくとぼけて見せて、自分の店で雇っている、バイトの佐屋や鳴海たちにまでしょっちゅうバカにされたり、からかわれたりしつつも、
その生き方は素朴でシンプルで格好いいのがタカシだった…。