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止まない雨はない

第6章 ウルトラマリン

「ジャジャーン!健全なる労働者諸君に、大変嬉しいお知らせがあるんだけどねー?」

BARルーカスの営業後、片付けをしていると、マスターのタカシがもったいぶって口を切った。

「…また何か言ってっぞ、佐屋?最近、マスター浮かれてるし…」

「…いいんじゃない?ドイツからルカ先生も帰ってきたことだしね…」


手を動かしながら、ジロリと横目で見て、鳴海は悪態をつく。その横で佐屋がピアノを専用クロスとポリッシュで丁寧に拭いていた。

「あー!そんなノリの悪いことでどーすんのかな?オレがせっかくイイ話を持ってきたっていうのにさー」

「あー!イライラするっ!言いたいことあんだったら、ちゃっちゃと言ってよ、マスター!!」

「じゃあ、発表します!!ルーカスの従業員ならびにルカ先生で、南の海へ避暑に行きたいと思いまーす」

「うっそ!?マジで???」

さっきまでとは別人のような手の平返しだな…と佐屋は鳴海に苦笑する。
単にマスターはルカ先生と旅行に行きたいだけなんだろうけれど…。

佐屋には既に、タカシの魂胆はバレバレだった。

「ねっ?ねっ?いつ、いつ?いつ行くっ?ねー?」

鳴海ははしゃいでいた。掃除道具をほったらかしにし、カウンターにかじりつく勢いでタカシに迫っている。

そういえば鳴海、夏は海に行きたい!といつも言っていたっけ?

高2の夏なので佐屋も受験勉強に本腰を入れたいところだった。医進コースの予備校も、夏期講習の予定がビッシリ入っていた。

…ま、2-3日は平気かな。鳴海と初めて海に行けることだし…。


佐屋も実をいうとそのプランには大乗り気だったりするのだ。

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