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止まない雨はない

第6章 ウルトラマリン

「そーだねぇ…。7月の最終の土日を使って行こうかと思ってね…」

「えーっ?平日じゃないのかよ?」

鳴海はただでさえ混雑するから…とブツブツ文句を言いた気だ。

「だって、しょーがないでしょ?ルカの診療所、休めないんだもん…」

タカシとしても平日を狙いたかったと主張する。
だが、連日超満員のルカの診療所に溢れている患者の様子を見たとき、
彼がなかなかルカを海へ誘うことが出来なかったことも事実だった。

「たまにはルカを休ませないとねー。診療所、繁盛しすぎて過労死寸前ですから…」

「此処とはエライ違いだって」

すかさず鳴海はツッコミを入れる。

“だいたいルカはいいひと過ぎるからなー”などと、タカシはぼやきはじめた。標榜科はもちろん眼科だというのに、ちょっとした外科みたいな症状でフラっとやってくる患者にも、文句ひとつ言わないで丁寧に処置してやっているのだ。

「ルカは可愛いから、ヤーサンたちに言い寄られちゃったらどうしようかと…」

…ここまでくると病気だな、と鳴海と佐屋は溜息をついた。

誰が好きで男に横恋慕するって…と鳴海が言いそうになった口を、佐屋がそっと手で塞ぐ。

「…ダメだよ、鳴海。マスターが機嫌を損ねたら、僕たち、海へ行けなくなるよ?」

「…わりぃ、わりぃ、そうだった」

思わず鳴海が神妙な顔に戻った。


「…じゃ、ま、そーゆーことね。君たち予定しておいてちょーだい」


タカシは鼻歌交じりで再び片付けを始めた。
それを見ながら佐屋と鳴海は
嬉しそうにお互いの親指を立て、ウインクをするのだった。

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