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止まない雨はない

第8章 Fallen Angel

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当初はルカの申し出を軽く見ていた良であったが、
ルカと久しぶりに再会し、スタジオで熱心にピアノを見入る彼に何かしら熱い思いを感じ、ルカにスタジオの鍵を差し出した。

「…お前の熱意にはただならぬ何かを感じるな。わかったよ。好きなだけココを使うといい」

本当に音楽やピアノを愛する人間に使ってもらえるんなら、死んだ親父も喜んでくれるだろうしな。

スタジオの鍵がルカの手のひらに載ったとき、彼はその重さに深く感動し、力をこめてそれを握りしめる。

「有難うございます福士先輩」

「いいってことよ。ま、延長したくなったら、遠慮なく言ってくれ。必要なくなったらまた、鍵さえ返してくれたらいい…」

「はい!有難うございます!本当に感謝します」

良からスタジオの鍵を受け取り、ルカは足取り軽く、まるで羽が生えたかのようにはしゃいでしまいそうだった。

……これで…これでタカシさんに最高のプレゼントをすることが出来る!!

ルカは歩きながらふと、何かを思い立ち、右手でポケットを探った。

「そうそう。これを付けて渡さないとな」

それはつい先ほど、露天商が開いていた皮製品の店でたまたま購入した、ネームタグだった。

片言の日本語を操る外国人らしい露天商人に、ルカはその皮製のネームタグに
“for takashi”と細工用の焼きコテで刻印するように頼んだのだ。

「いい具合にあんな店があってよかった…」

ルカはそのタグを見て、素朴な出来に満足している。

あと数十メートルでタカシの店に辿り着く。


彼の脳裏に浮かぶのは、タカシの喜ぶ顔。





そんなときだった。

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