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止まない雨はない

第8章 Fallen Angel

「……ホールド・アップね?あんた」

突然、ルカは数人の男たちに路地へと引きずり込まれた。

「…………!!」

腰には、銃口らしきものが突きつけられている。

……なんだ?何が起きてる?

突然の出来事に、ルカは混乱する。

「あんたは逆らうと、ロクなことないね」

さきほどから、片言の日本語を話す東洋人が、一人だけルカに命令をしている。

「……オレを……どうするつもりです?」

きっと、何か人違いのトラブルに違いない。

ルカはちゃんと話しあえば、解放してもらえると信じた。

「オレはこの近くで眼科のクリニックにいる医師です。あなた方は、誰かと人違いされていませんか?」

「No!人違いじゃないね。あんたは人質。悪いのは、タカシと堺谷ね」


………なんだって!?

ルカは思わず息を飲む。以前だったが、タカシがこんなことを言っていた。


≪最近さぁ…土地が高騰してンの。そのせいでさ、ルーカスを売れって、地上げ屋がよく来るんだよね…≫

≪地上げ屋ですか…≫

≪そ。ま、ココは堺谷サンから貰った店だし、そう簡単に売るつもりなんてないんだけどさ。連中にしてみたら、ここは数百億の価値があるらしくって…≫

≪数百億!?そんなに??≫

≪でしょう?自分でいうのもなんだけど、あんなオンボロな店にそんな価値があるなんて思わなかったもの。
で、マフィアも絡んでるみたいでさ≫

≪そんな……!気をつけてくださいね、タカシさん≫

≪ははは、そうするよ≫

****************


つい最近、そんな会話をしたばかりだったというのに、自分は失念していたのだ。

では、今自分を捕らえている連中はその一味というわけか?

「…オレを捕まえて、どうするつもりなんですか?」

後ろ手にロープで何重もきつく縛られながら、ルカは話が出来そうな東洋人に声をかける。

「あんたを使って、タカシと話が出来るようにするだけ」

「……それは無理です!」

「そんなこと、ないね。タカシ、あんたに惚れてる。あんたを殺すいえば、タカシ、言うこときくね」

「……………っ」

やはり、そういうことか。
ルカは今、拘束された自身を呪った。


ごめんなさい………タカシさん。

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