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万華鏡トワイライト

第1章 夕焼け空から

職場を出るのが0時20分頃で、途中でコンビニに寄り道したりしながら帰ると帰宅はだいたい1時近くなる。当然、親はもう寝ているので、鍵を自分で開けて静かに家に入る。子どもの頃は、親が仕事で家にいなくて留守家庭だったから自分で鍵を開けて入り、今となっては、帰宅時間が遅すぎて親が寝静まっているので、やっぱり鍵を開けて入る。

私は、ずっと鍵っ子で一人だ。いや、違うな。もっと子どもの頃、おばあちゃんがまだ生きていた頃は、おばあちゃんがいつも一緒だった。お母さんがずっと「おばあちゃん」って呼んでたから私も「おばあちゃん」呼びだったけど、私にとっては曾祖母(ひぃばあちゃん)にあたる人。友達のいなかった私の、唯一の遊び相手だった。
折り紙を教えてくれて、あやとりを教えてくれて、お手玉を見せてくれた(お手玉も教えてくれたけど、私はついに出来るようにはならなかった)そんなおばあちゃんが、5歳の時のクリスマスプレゼントに買ってくれた万華鏡は、今でも持っている。当時は、泣いた。こんな昔のおもちゃじゃなくてプリキュアのドレスが欲しかった、と荒れに荒れ「おばあちゃんなんか嫌い!」とまで言ってしまい、おばあちゃんを困らせた。その1ヶ月後に、おばあちゃんは亡くなって、万華鏡は実質、おばあちゃんからの最期のプレゼントになった。おばあちゃんを困らせてしまったこととか、そのすぐ後におばあちゃんが死んでしまったこととか、そういうのと関連して、万華鏡を見ると後悔と悲しみの気持ちになるので押入れの奥にしまい込んでそのまま忘れていたけど、大人になってから、コンビニバイトを半年で辞めたあと、しばらくニート状態で、だらだらした日々を過ごしていた頃、これではダメだと心を入れ替える為に部屋の大掃除をした時に見つけて懐かしくなり、それからはすぐ手に取れる場所に置いている。私がまだ今よりもずっとずっと若くて、将来には無限の可能性があって、夢も希望もあった頃の象徴みたいなものだから。いつだって、人は失ってからそのものの大切さに気付く…。そして、時間は戻らない。就職には失敗し、友達も彼氏もいなくて、何年も昼夜逆転した生活を送る日々。

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