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万華鏡トワイライト

第2章 明けの明星

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「…ちゃん、…もちゃん」
「だれっ?」

誰かに呼ばれた気がして振り返る。

「ももちゃん、元気だった?」
「おっ、おばあちゃん!」

小さい頃、いつも一緒にいてくれた、大好きだったおばあちゃんだった。なぜか、涙が出てきた。

そして、気付いた。これは、夢の中だ、夢を見ているんだ、と。
でも、夢でも現実でもどっちでも良かった。誰かと業務連絡以外の会話が出来るならそれだけで充分。

「おばあちゃん、私、私ね…」
「なんも言わんでもええよ、寂しかったね。こっちへおいで」

おばあちゃんが、にこにこ笑顔で手招きしてくれる。
亡くなった人に手招きされてるってことは、私も死ぬんだろうか、一瞬そんなことを考えたけど、生きてても特に何があるわけでも無いのでそれでもいいか、と少し思った。三途の川っぽいものは見えないけど……。

おばあちゃんの隣まで行くと、いつの間にか神社のような場所に周りが変わっていた。いや、見覚えある。ここ、小さい頃に住んでた場所の近くにあった神社だ。
私が小学校3年生の頃、今の家に引っ越したのだが、以前の家の近くにあった神社にそっくりだった。

境内入り口の四段くらいの階段になっているところに腰かけて手招きするおばあちゃん。隣に座る。

「ももちゃんは、偉いよ。毎日、本当によく頑張ってる」
「でも、こんな乱れた生活リズムで、友達とももう何年も会ってないし、人との会話もほとんど無くていつも一人で…」
「いいんじゃないかい?どんな生活リズムでも、それは人それぞれだよ」
「……」
「働いてる時間が遅いから、寝る時間や起きる時間が遅くなるんだよね。でも、お店がその時間に開いてるってことは、お店を必要としてる人がいて、その時間に食べに来る人がいるから開いてるんだよ」
「でも私、簡単な調理補助と掃除ぐらいしか出来なくて」
「それも大事な仕事だよ。飲食店なんてシェフ一人じゃ回らないんだよ」
「なんか、毎日、進歩がないような気がして…」
「進歩はゆっくりゆっくりするもんさ。ゆっくり過ぎて、渦中にいる時にはわかんないんだよ、それにね、どんな仕事でも、必要ない仕事なんて無いからね」

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