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万華鏡トワイライト

第3章 八幡神社

服を着替えて、リビングに顔を出す。

「お、おはよー」
「あら、ももか。アンタがこんな時間に起きてくるなんて珍しいね。今日、仕事は?」
「やすみー。ね、お母さん、昔住んでた家の近くにあった神社ってさー」
「八幡神社?」
「あ、はちまん神社、って言うんだ。ここからでも行ける?」
「歩いて行くには少し遠いけど、自転車なら、まぁ、頑張れば行けなくは無いかな。行きたいの?」
「なんか、夢で見て。懐かしくなって」
「そうだ、連れてってあげようか?」
「えっ?」
「ドライブ、ドライブ♪たまにはいいじゃない」

親と一緒に出かけるなんて、いったい何年ぶりだろうか。

「って、車あるの?お父さんが仕事に乗って行ってるんじゃ?」
「お父さん、今日、仕事の後に会社の飲み会なんだって。だから今朝はお母さんが駅まで送ったの」

それから、母の運転する車で走ること約15分。住宅街の、コインパーキングに車が駐められた。あたりの景色は、あまり見覚え無い、が、

「ここからは歩くよー」

と言われ、仕方なく車から降りる。ここ、どこよ?
私の疑問をよそに、

「懐かしいけど、だいぶ雰囲気も変わったねー。へー、こんなところに新しい店が出来てる?」

などと、懐かしんだり、街並みの変化に驚いたりしながら、どんどんと進む母。今はぐれたら、多分自力では神社に辿り着けない、いや、神社の名前わかってるんだから、アプリで探せばなんとかなるな、まぁ、着いていくほうが楽か、と思い、後を追う。

2つ角を曲がり、横断歩道を渡ってしばらく行くと、石段が見えて来た。

「せっかくだからお参りしようか」

並んで登り、半分ほど登ったところで後ろを振り返ってみる。
石段の踊り場から振り返る景色って、なんか好き。歩んできた人生、みたいな雰囲気がある。

そして、続きの階段を見上げる。私が感傷に浸っている間に、母だけサクサクと上に行っていて、残り数段のところまで上がっていた。
母の後を追って、自分も石段を登る。

手水で手を清め、参拝。

当たり前だけど、今朝の夢とは違って、おばあちゃんはいない。でも、優しい風を感じて、どこかから見守ってくれてるんじゃないかなと思った。

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