担当とハプバーで
第1章 止まらぬ欲求
家に着き、外着を脱ぎ捨て、そのままシャワーを浴びに浴室に入る。
ふわふわと足元が不安定。
冷水が温水に変わるのを待ちながら、両頬を押えて悶える。
格好良かったあ……。
なに、あの動画からそのまま出てきたビジュアルは。
あの仕草。
あの言葉。
あの余裕。
水音を聴きながら平静を取り戻す。
祥里が帰ってくるまであと二時間。
夕飯はいらないだろうから、それ以外の家事を済ませておこう。
タオルで体を拭いながら、携帯の通知ランプに気づいて裸のまま手に取る。
メッセージだ。
「営業メールはやっ」
落ち着いて読もうと急いで着替えとドライヤーを済ませ、ベッドに腰かけて深呼吸してからアプリを起動する。
ピアスのアイコン。
片仮名でハヤテ。
そっとメッセージを開く。
「凛音ちゃん、今日は来てくれてありがとうな。まさかあの動画見て俺に会いたいって思ってくれるなんて、予想外すぎ。ちなみに明日新作出るよ。また気に入ってくれたら直接感想言いに来てな」
絵文字はなく、ゆるキャラスタンプがバイバイと手を振って、ハートマーク。
声が聞こえてきそうな文面に、思い出してニヤニヤしてしまう。
ダメだ。
一回きり。
もう行かない。
ハマってしまうのが目に見えてる。
祥里とは月五万ずつ貯金口座に入れてるけど、好きにできるお金が二百くらい貯まってる。
きっとホストクラブだとすぐ消える。
落ち着くんだ。
久しぶりにいい思いができた。
それだけでいい。
アプリを閉じて、シンクに向かう。
足取りは軽い。
水につけておいた食器を泡立てる。
年下かなあ。
何年ホストやってるんだろう。
稼ぎは凄いのかな。
やっぱ客と色恋してるのかな。
色恋……。
妄想が始まりそうなので、手を拭いてテレビをつけた。
音楽番組の流行りの曲が流れる。
全然耳に入ってこない。
新作何時に上がるんだろう。
今回は五千円ですんだけど、次回はいくら位かかるのかな。
十万くらいならへそくりから出しても影響少ないんじゃないかな。
だめだめ。
思考がぐるぐると。
こんなに祥里以外の男性のことを考えたのは何年ぶりだろう。
食器を洗い終え、炊飯器の古い米をフリージングにして明朝に炊飯タイマーをセットする。
日常が夢の時間を薄れさせていく。