担当とハプバーで
第7章 皮肉のパーティ
動画を撮り終えてから、ナオキとタツとマサヤと四人で並んでカウンターでラーメンを啜った。
「疲れた。マジでタツ尺取りすぎ」
「ナオキに言われたくないねえ。苦痛だったよ、あの恥ずかしいエピソード聞かされるの」
「編集して上げるのは次の月曜かな」
マサヤの言葉に、編集の苦労を知るナオキがげんなりした顔をする。
「イオルにも編集代弾んでやってくださいよ」
「当たり前だろ」
黙って会話を聞いていたが、ハヤテは一足先に最後の麺を飲み下して、顔を上げた。
「コメ欄解放して大丈夫ですか、マサヤさん」
「ハヤテにしては真面目発言じゃあん」
タツの冷やかしを受け流して、左隣に座る上司の反応を辛抱強く待つ。
二番手に食べ終えたマサヤが箸を置いた。
「そうだな。アンチも増えたけどファンも増えた。コメントしたい気持ちを抑えるのは良くないだろ。度が過ぎたコメントは消していく」
登録者が瞬く間に倍増したチャンネルには、新しい動画を求める声が殺到していた。
過去の動画は新規と古参が入り混じり、喧嘩腰にレスを繰り返すのも少なくない。
お冷を飲み干してから、ハヤテは立ち上がった。
「面倒な客じゃなくて、純粋なファンがいっぱい来てくれるといいなあ……」
「そういえば、凛音ちゃん全然来なくなったな」
「お黙りぃ」
ナオキにそっとタツが肘鉄を入れるのを見ながら、千円札を二枚マサヤに渡した。
「先に上がります。お疲れっした」
「明日は少しくらい遅れてもいいから、無理するなよ」
マサヤの優しい言葉にふっと笑う。
会釈をしてから店を出た。
もう直ぐ一時か。
土曜の夜は金曜ほど人数は多くない。
それでも夜にすがるふらついた足取りに満ちている。
あれから四日。
凛音から返信はない。
次の約束は、来週の火曜。
雑踏に紛れて歩きながら、返信はもう来ないような気がしていた。
だから、あの内容になったわけだけど。
企画を思い返して目線を落とす。
約束を守ったところで、もう見てくれるかもわからないのに。
水、木は羽が生えたように営業が捗った。
ナオキとタツにも「どこの風俗で潤ったんだ」と茶化されまくった。
タツはわかってて、からかってただろうな。
タクシーをアプリで呼んでから、大通り沿いに立ち、ネオン街を眺める。
一度目は失敗、二度目は最高、三度目は神のみぞ知る、か。