担当とハプバーで
第1章 止まらぬ欲求
ここ一週間ホスト体験ブログを読んで回った。
ホス狂。
太客。
嫌われる行為など。
どれも大きな壁の向こうのような話で、現実味がなかった。
ただこの目の前の男性と飲むには、今後二万は最低でも必要なのはわかった。
初回はお試し。
ここから先は、貢ぎ先。
「そんな不安な目しなくても、高い酒は頼まんよ」
メニューに視線を固定していたからか、安心させるように言われてドキッとしてしまう。
夜明けのジャックの平均二回目価格は二万前後とクチコミを見たけれど、結局何を頼むかは本人次第というわけだ。
「まあ応援してくれたら嬉しいけど」
「そう、ですね。細客だと思ってもらって……」
ポン、と頭を撫でられる。
「素直か」
明るく笑う。
その声、ずるいなあ。
見かけの怖さを簡単に塗りつぶす。
「今日もノンアル?」
「いえ、なにか飲んじゃおうかなと」
「じゃあ、テキーラ乾杯でもしよ」
流れるようなオーダーの後に、ショットがふたつ運ばれてきた。
久しぶりだなあ。
アルコール。
祥里は留守だし、一人で飲んでも楽しくないからノンアルばかりだった。
「はい、どうぞ。お姫様」
差し出された小さなグラスをそっと受け取る。
カチン、と鳴らして、同時に口に。
少しずつ飲もうと思ったのに、二口で空にしたハヤテを横目に、学生時代のノリが再燃して一気に飲み干してしまった。
「イけるなあ、凛音。オカワリいる?」
「もうちょっと、弱いやつがいいかな」
お酒が美味しいし、高いお金払ってるのに敬語で話すのも馬鹿らしくて。
ふふ、と笑うとなんだか頭が熱くなる。
「何系が好きなの」
「うーん、梅酒とか霧島とか」
「じゃあ、梅酒水割りにしとく?」
「うん」
喉がじんじんする。
今日は二杯でやめとこう。
ハヤテももうすぐ居なくなるだろうし。
ワアっと店の奥から声が上がる。
「夏澄お姫様、ルイありがとうございまーす」
よく通る爽やかな声とクラブミュージック。
上がる曲だ。
首を伸ばすと、ナオキの席だった。
ナンバーワンかあ。
ルイって百万とかじゃなかったっけ。
グイッと頭を戻される。
目の前に、無表情のハヤテ。
「俺といるのに気を逸らしてんなよ」
「やっば」
声に出てしまった。
口を押えて、まじまじと見てしまう。
「いい子でいれる?」
コクコク頷いた。