担当とハプバーで
第4章 明るく怪しい誘い
「姫に彼氏と別れたと言われた時イケメン選手権~! 一位はもちろんオレな!」
ナオキがドヤ顔で親指を立てて自分を指す。
この動画はハヤテも勿論だけど、ナオキがトップたる所以が詰まっていてお気に入りだ。
第五位から始まっていく中で、ハヤテは二位。
カメラを撮っているのは恐らくマサヤ。
裏返った声で姫を演じる。
「あのね、彼氏と別れちゃったの……」
女々しいマサヤに笑いをこらえることから始まるこの企画は、全員が半笑いしながら格好いいセリフを言うのがじわじわくる。
「だから辞めとけって言ったのに。よしよし、よく頑張ったね。そうだなあ、金の切れ目が来るまで可愛がってあげるよ、おいで」
五位のタツのじっとりした声と仕草に思わず画面を凝視してしまう。
不思議なオーラなんだよな。
中性的で、執着が強そうでいて余裕で。
四位、三位は知らないホストだった。
三十人はいるらしいから、動画に初登場だって何人もいるはず。
ハヤテが写って、つい胸が騒ぐ。
マサヤの言葉にすっとサングラスを外して、なにか言おうとした唇が震えて急いで後ろを向く。
タンマ、とばかりに画面に手を挙げてから深呼吸する背中が可笑しくて仕方ない。
マサヤは女装でもしてるのかもしれない。
笑いを何とか耐えて、サングラスの柄の部分を甘噛みしてからギッとカメラに視線を向ける。
「気づいてやれんでごめん」
眉を歪めて寂しそうな顔をする。
「どんな理由があっても、こーんな可愛い姫手放すとか頭悪いと思うよ、彼氏。だーかーら」
あ、いつもの笑顔。
悪い笑顔。
「一秒でも早く俺に沼って忘れろよ」
ああ、前に見た時より響く。
砂のような感情で祥里に向き合わなければならない今、ハヤテに会いたくて仕方ない。
余韻も冷めきらぬうちにナオキの出番。
いつもよりローアングルなカメラを見下ろすようにして、タバコを咥えてる。
マサヤの言葉に噴き出しそうなのを手で抑えてから、タバコを灰皿に押し付けて微笑む。
何を言うんだろうというたっぷりの間の後で、一言だけ告げるんだ。
「……待ってたよ」
これは優勝。
推しホストにこんなの言われたら、冥利に尽きるでしょ。
ナオキが人気な理由がわかる。
いつもは無駄に長く話すくせに、こういう時だけギャップを見せつけてくる。
いいなあ、また行きたい。