担当とハプバーで
第4章 明るく怪しい誘い
あっという間に駅について電車の座席に身を預ける。
もっと見ていたいけど動画アプリを閉じて、もう一つ調べないといけないページに飛ぶ。
指先が馴染み深いブックマークをタップする。
最初の訪問まで遡って読んだハプニングバーのブログ。
最新のブログが上がっていた。
ふうっと息を吐いてから記事を開く。
人肌恋しい季節になり、混む日が増えてきましたね、と始まる文章に心臓が撫でられる気持ちになる。
人妻でハプニングバー歴五年のブロガーが綴る文章は、あまりに生々しい経験で満ちていた。
初来店の日からどうしても身体を重ねたくて、会話が弾まずに店員に相談をして、間に入ってもらったこと。
二度目であまりにも外見が好みの男性に抱かれて、いつかその人との再会を夢見ているがその後は会えてないこと。
体型や化粧、服の趣味の変化を指摘され、夫にバレると思いきや、ダイエットが成功したのかと褒められて脱力したこと。
おそらく自分よりは年上の文章は、いつでもこの世界が隣にあるんだと語りかけてくる。
祥里の浮気を疑ってから、毎晩何度も読み耽っている。
恋人が浮気していたと知って、最初にやることは?
別れの準備かもしれない。
次の恋愛に向けての自分づくりかもしれない。
こっぴどい復讐の計画かもしれない。
でも、私はこう考えた。
私も同じことをしてやろうかと。
その邪念が過ぎる間は未練も強い。
三十二歳にして親にも紹介済みの彼氏と別れるハードルの高さに、自分が堪えきれないから別れはまだ考えてない。
でも、意味がない関係を続けるほど強くもない。
それならせめて、レスを解消したい。
相手が外で違う女性を抱いているなら、自分だって違う方法で解消させてほしい。
スマホを覗くのは怖くてできない。
寝ている祥里の枕元のそれを何度手に取ったか。
通知は切ってあるのか、夜間に画面が光ることは一度もないから、まだ何の証拠もない。
でも脳内ではすでに有罪が下されていた。
シャツについた香水の香りに、髪の毛。
朝出て行くときの電話。
何度も失敗した夜。
それだけでパズルは完成に近づく。
そんな自分に、こんな方法がまだ残っていると落ち着きを取り戻してくれるのがそのブログだった。