担当とハプバーで
第4章 明るく怪しい誘い
一定のリズムの寝息を聞きながらスマホ画面に目を這わす。
一通りSNSをチェックして、いいねとお気に入りを押し回ってから例のブログへ。
十以上年の離れた若者とのワンナイト。
読めば読むほど刺激が強い。
少し年上を敬う遠慮もありつつ、年上を翻弄している優越感も滲むような行為。
学生の頃は上下二歳の世界だった。
それが社会に飛び出せば垣根は消えて、成人してれば何歳だって男女の仲になれる。
ハプニングバーなんてその象徴。
二十代から六十代まで相手にした人妻の経験は、たんなる性的発散だけでなく、人間の研究じみたところもあった。
こんなに多種多様なんだと思った。
マッサージから始めたり、複数でいきなり相性を確かめたり。
金曜日、何時までやってるんだろう。
ふと新宿のバーの営業時間を調べた。
終電までなら余裕で開いてる。
昼の部と夜の部に別れていて、二十時から深夜一時までが夜の部。
そこでフィーリングがあった相手と外で待ち合わせをして、ホテルに行った体験もあった。
店の中のセキュリティを飛び出してまで、その人を知りたいってすごい。
付き合う訳でもないのに。
それから有岡のバンドを調べてみた。
ライブに行ったファンたちがレポを上げているのをいくつか拾い読む。
メンバーカラーで髪色を染めていて、赤の有岡は二番人気らしい。
ボーカルが圧倒的で、バンド名で調べるとその人の名前が九割くらい。
昼休みの会話を思い出し、スマホ画面を見られたことを余計に思い出した。
ああ、失態。
あの時の口角の上がり方。
いいオモチャでも見つけたような。
意地悪な笑い方してた。
ライブに行くだけで忘れてくれるなら安いものかもしれない。
やっぱり外で読むのはやめよう。
画面を閉じて、瞼も閉じる。
想像の中でライブハウスの客席に立つ。
観客の中心、ステージで歌う男。
その傍らで音に酔いしれるようにギターを鳴らす有岡は、妙に謎めいている。
笑ったかと思えば鋭い目付きで観客を見渡し、ボーカルと背中合わせになってギターをかざす。
観客の声援、悲鳴。
ステージバックからハヤテが出てくる。
妄想に乱入してきた。
かと思えば自分もステージにいて、ハヤテがそっと肩を引き寄せて耳元で囁く。
「特別に教えたる。これ、夢な」
ああ、明晰夢のご褒美。