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担当とハプバーで

第4章 明るく怪しい誘い


 ライトに照らされたハヤテはクラブで見るより若く、輝いていた。
 有岡が顔を上げて唇を突き出す。
 何しに来たよ、とばかりに。
 ああ、眼福だなあとその二人を眺めていると、肩にぽんと手がかけられた。
 振り返らなくてもわかる。
 これは祥里の手だ。
「凛音が何しても大抵許すけど、浮気だけはやめろよ。そんな女と暮らしたくない」
 そうだ。
 同棲始める時に言われた言葉。
 夢って記憶の引き出しを開けるのがお好き。
 両手をグイッと引かれて祥里の手から逃れる。
 見上げるとハヤテの笑顔。
「バレなきゃいんだよ」
 ああ、悪い顔。

 目が覚めると、金曜の朝で、祥里はまだ眠りの中にいた。
 馬鹿げた夢を見ているのかな。
 そっとキッチンに向かって水を飲み、深く深く息を吐いた。
 浮気をしたら許さない、か。
 レスになるのは罪じゃないの。
 興味が無くなったならそう言えばいいのに。
 自慰行為のゴミだって出ない。
 仙人にでもなったの。
 顔を洗ってサラダを作る。
 レタスをちぎってきゅうりとトマトと和風ドレッシングで和えていく。
 菜箸に絡まる葉っぱを落としながら。
「あれ。今日早いじゃん」
 起きてきた祥里に水を注いで渡す。
 意外そうな顔をしてから飲み干した。
「ありがと」
「どういたしまして。サラダとトーストと卵ならできるけど」
「お願いします。ヒゲ剃って来る」
 眠そうな足取りで洗面所に向かう祥里の右手には、画面の明るいスマホが握られていた。
 髭を剃るのにソレ要らないでしょ。
 どんな見られたくないことが詰まっているのか。
 考えるだけで頭が痛い。
 夢の中の祥里の言葉を、本人はまだ覚えているのかな。
 きっと忘れてるはず。
 だって私はあの時こう答えた。
「私も同じ。その日で別れる」
 自信満々に頷かれたのに。
 確定的な証拠は無いけれど。
 それがまだ精神を保たせてくれてる。
「今日だっけ? 遅くなんの」
「そうだよ」
 戻ってきた祥里の顔はいつもよりスッキリして、楽しい行事の前みたいに頬が緩んでる。
「帰り何時くらい? 落ち合うかもな」
「かもね。終電になりそうだったら連絡するから、先に寝ててね」
「おう」
「祥里も飲み会?」
「いやー、今日は後輩指導だけかな。緊急対応が出たら遅くなるけど」
「じゃあ帰ってきたらコメ研いどいて」
「はいはい、マダム」

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