月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第12章 メテオシュタイン
「アンバー!ヘルメットの中で吐いたら溺れて窒息するよッ!」
「わ、わかってます!でも、これじゃあッ!」
アンバーの首が機体の振動でもげそうだ
今度は腕を両翼に収納させ飛行機のシルエットに戻る
そして再びクレーターの崖に沿って高速上昇していく
「きゃぁぁぁぁッッッ!!!!!」
アンバーが絶叫する
クレーターの最上部まで登りきった
「トランスフォームッッッ!!!」
また上体を倒して腕を広げる
アンバーの上半身がシートベルトに食い込む
「ああ………ッッッ!」
アンバーはもう声が出ない
「気張れアンバー!もう一度下降するよ!」
「や、やめ……」
ダイアナは苦しむアンバーを無視して何度も高速移動と変形を繰り返した
アナハイムの工場に戻ってきたとき、すでにアンバーの意識は無かった
ダイアナがコックピットから出てドリンク片手にメカニックマンと詳細な打ち合わせをしているとき、
担架で運ばれていくアンバーの姿を見た
メカニックマンも会話を止めて担架を見つめた
「ダイアナさん、やり過ぎですよ」
「戦場ではこんな動きばかりさ、慣れておかないと次に死ぬのは彼女自身なのさ」
「その調子でいくといよいよ相棒が居なくなりますよ?操作と制御で2名組むんですから」
「わかってるよ、アンバーに嫌われたかな?
せっかく夜もベッドでいたぶってやろうと思っていたのに」
「激し過ぎですよ、そんなんだからチャーリーも離れていったんです」
「アイツはそもそもそんなレベルじゃない
チャーリーよりスコッティのほうが見込みがあったよ」
「確かにスコッティはダイアナさんの操作と似てましたね、彼も凄まじい動きばかりでメカニックマン泣かせでしたから」
「元気でやってるかな、あいつら……」
「そんなシンミリしてる時間は無いですよ、メテオシュタインの完成品の納品は午前中に終わりましたが、これからクレームやら意見やら出てくるんですからねッ!」
「地球の重力に慣れた人間が、このメテオシュタインを乗りこなせるのかね?
この機体はじゃじゃ馬だよ」
「ダイアナさんのセッティングが極端過ぎるんですよッ!」
ダイアナは笑いながら格納庫をあとにした…