
月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第12章 メテオシュタイン
ダイアナは廊下を歩きながらメテオシュタインを引き継いだ地球からのパイロットを思い出す…
若い男女だった
〈退役した元連邦空軍と言ってたな…
意外とモビルスーツ乗りより空軍のパイロットのほうが上手く乗りこなせるのかもね…〉
ダイアナは午前中に納品したときの事を思い出していた…
ダイアナがパイロットルームに戻ると企画室の室長スティーブン・ブッソが待ち構えていた
苦々しい表情の男だ
「ダイアナ、ダイアナ、ダイアナ…ッ!
どうしてキミはいつもこうなんだッ!?
パートナーのパイロットを何人つぶした?
どうするんだ、これから!
試作機の新作は次々と出てくるんだぞ?
誰が乗る?
誰も居ない!
なぜ?
キミがつぶしたからだッッ!!
キミが有能な新人パイロットたちを次々と潰したからだッッッ!!!」
ダイアナは返事もせずスティーブン室長を無視してパイロットスーツを脱いでいく
下には軽装な肌着の黒いTシャツだ
ツナギになっているパイロットスーツの上半身を腰から垂らしロッカーからキャンディーを取り出して口に入れた
「で? どうしたいの?」
「キミには責任がある!次の任務にキミを外すよう周囲の声があるが、私はあえてキミに任せようと思う」
「?」
スティーブン室長はタブレット端末を渡してきた
「待望の実戦だ、楽しんでくるといい」
不気味な笑みを浮かべながらスティーブン室長はパイロットルームから出ていった
〈…なに言ってんだアイツ!〉
ダイアナは苛立つ感情を抑えてタブレット端末を操作する
自分のIDとパスワードを打ち込むと画面の上から新規の情報を示してくる
指でフリックすると、新規の指示書があった
書式のフォーマットがいつものアナハイム社共通のものではない
ロゴマークはアナハイム社ではなく〈キサンドリア〉の組織のロゴマークになっている
ネオ・ジオンを支援する組織〈キサンドリア〉
連邦政府の弾圧から反発するかのように月の住人の大半が〈キサンドリア〉に参加しているのだ
もちろんダイアナも加わっているのだが、具体的な指示書というのは珍しい
内容を確認するダイアナだったが読み進めていくうちにわなわなと身体を震わせた
「キサンドリアも落ちたものだッ!」
