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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第2章 複座タンデム機の訓練

結局、強引なヴァレンティア・ヴァレンティンに連れられスコット・イアンと上司のオペレーター、クレア・サンデリア


そこへ何故かスコットの以前の相棒チャーリー・ベナンテとエースパイロットのダイアナ・ギルスベルゲンまで加わり総勢5名で街へ繰り出すことになった


月面都市グラナダの街は最上階層、月面の表層部にある


ショッピングモールやレストラン、公園など公共施設がおもに広がっている


天井は巨大な強化ドームとなっており、見上げると星々が瞬いてみえる


月の表側のフォン・ブラウン市は常に地球を眺めることが出来るが、月の裏側に位置するグラナダの空は漆黒の闇だ


月の公転と自転がどちらも1日にあたるのでグラナダから地球を見ることは出来ない


グラナダの富裕層はバカンスに地球を展望するフォン・ブラウン市への旅行に行ったりもするらしいが、貧困層のスコットやチャーリーは地球を見たことも無かったのだ


5人はエレベーターで最上階まで上がり、そこからクレーター周回エアバスを乗り継いで繁華街へ出た


街はにぎやかで華やかだ


スコットはほとんど来る用事がなかった


騒がしいのは嫌いだったし、生きていくことで精一杯だったため、娯楽を楽しむ余裕もなかった


女性陣はたまにショッピングに訪れているらしい


馴染みの店の名前を言い合って、情報交換していた


ダイアナの馴染みの店で食事を摂ることになった


スコットは寮の食堂しか利用したことがなかったので、注文にめちゃくちゃ時間がかかった


それを見てクレアとヴァレンティアは笑った


スコット以外の4人はとても話し好きで、次々と話題を変えては皆でアレコレ口を挟む


皆がそれぞれに話し始めるので5人のテーブルだけ他の客よりにぎやかに思える


スコットは皆が勝手に話し始めるので「ラクだな」と思っていた


元々無口で話すような話題も乏しいスコットからすれば、とても楽が出来る


なんとなく耳を傾け、ふぅんと相槌をうち、皆が笑うと自分も口角を上げる


数年前まで最下層の薄暗いごみ溜めのようなスラムで暮らしていたスコットにとって、皆とテーブルを囲んで談笑するような状況にいつまでも慣れられない


どこか半分、現実味が無いまま時間は過ぎていくのだった


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