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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第13章 マスドライバー

その頃、コックピットルームでは苦悶の表情をしながら〈ストーム〉を操るキアラの姿があった


スコットはどうしてやることも出来ず、ただキアラの口元の血を拭き取ってやることしか出来なかった


「スコット…、今のうちに話しがある」


キアラは正面のモニターから目を逸らすことなく隣のスコットに声を掛けた


「どうした? 代わろうか?」


「いや、この機体はワタシにしか操れない
 それより聞いて欲しいんだ」


キアラは独り言のように話しをしていった


今から14年も前の一年戦争より、さらに昔

スペースコロニーで自治政府を築いていた数々のスペースノイド〈宇宙移民者たち〉は来たるべき独立戦争を見据え、虎視眈々と秘密裏に準備を進めていた


コロニーに駐屯兵団を作り、宇宙戦艦を建造し、宇宙攻撃飛行艇を編成していく


さらに非人道的な研究が始まる


兵器として対人対艦攻撃を備えた歩兵兵器〈モビルスーツ〉の研究


宇宙空間での異常な感覚を超越した〈ニュータイプ〉と呼ばれる計画、


それらだけでなく、陽の目も当たらぬまま抹消された計画も多数あったのだと言う


〈エターナル計画〉はそのうちの消された研究のうちのひとつ


選ばれた子どもたちを被験者として肉体改造を施し兵士とする恐ろしい計画


さらにそれを推し進めたのが〈ストーム計画〉なのだと語る


〈エターナル計画〉で選抜され能力が開花した子どもたち

その能力をフルに活用出来る特別な機体
その開発コードネームが〈ストーム計画〉なのだ、とキアラは語る


「その計画の中で一番の始祖と呼ばれるのがアレクという異能者、そのアレクの遺伝子を継いだのが〈キアラ〉なんだ…」


ちょうどそこまで語ったときにクレアと目覚めたばかりの少女がコックピットに入ってきた


キアラは全身の痛みに耐えながら少女にコックピットシートを明け渡す

少女は何も問わずに黙ったままコックピットに座り込むと、当たり前のように船をコントロールし始めた


「…目的地は設定してある、機体の制御だけしていればいい……」


キアラはそのまま床に座り込んでしまった


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