テキストサイズ

月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第13章 マスドライバー

クレアがキアラを抱える

クレアは医療カプセルに移動させようと手を貸すが、キアラはやさしく振りほどいた


「ありがとうクレア、でももうわたしはここまでのようだ
 その前にスコットに母親の話しをしておきたい、このままでいいから」


クレアとスコットはキアラを床に横たわらさせ、スコットは脱いだ上着をかけてやる


「…アレクの子供〈オリジナル・キアラ〉はエターナル計画の中でも抜きん出た才能の持ち主でね…
 わたしたちはそのコピーなんだ

 それだけじゃない、コピーは何度も重ねられ
 一部は消耗品のような扱いをされ、
 放棄されたり、逃げ出した者も居たんだ

 スコットの母親〈キアラ〉ももしかしたら
 月面まで逃げ延びたひとりだったのかもしれない
 
 だが残念なことに放棄された者の中には施設の設備を離れることが出来ない者も居たんだ
 そのあたりコピーの劣化がどうしても生まれてしまう
 
 だからわたしたちは代るがわる眠ることによって、その宿命から逃れようと足掻いたんだ

 スコット、君の母親は宿命から足掻くのではなく、己の人生をまっとうしようとして君を産んだのかもしれない
 わたしたちとは違う道を選んだんだ
 もしかすると私が母親で、君を産んだのが私かもしれないし、君の母親がこの機体を選んでいたかもしれない

 どちらにせよ、君にはもしかすると〈エターナル〉の血が流れているかもしれないよ

 優秀な戦闘能力が…」


スコットは黙って聞いていたが、頭を左右に振った


「もう、話すな!キアラ

 そんなことどうだっていい!
 ボクがどの生まれでも関係ない
 母親は既にいない
 過ぎ去った事だ!
 そうだろう?
 それよりキミはまだ生きている
 死ぬな、キアラ!」


キアラはふっ、と笑った


「ふふふ、そうか…君は未来に向かって今を生きているんだな
 永遠などと言いつつ、いつまでも呪われた過去に引きずらて逃げ惑っているのはワタシのほうだったんだな……」


コックピットシートに座るもうひとりのキアラはチラリと視線を送った


ストーリーメニュー

TOPTOPへ