月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第14章 ビデオ・ログ
「協力者、と言っても
やはりそれも我々だ
我々の中で外で暮らすものも居るんだ
そう多くはない
ここから離れたら、やがて肉体が耐えられない」
スコットはそれを聞いて母のことを思った
母は月面探査の調査員で優秀なモビルスーツのテストパイロットだったはずだ
そのパイロットがなぜ早く急逝したのか、スコットもわからなかったのだ
「ここから離れられない、とはどういうこと?」
「ここに残る私達は〈欠陥品〉だからだ
優秀な者は戦場に立つのだろうが、
私達〈欠陥品〉はこの〈ストーム〉の〈電池〉になるしかないのだ
〈ストーム〉も私達が居なければ維持できないにのと同じように、〈わたしたち〉もストームが無ければ生き永らえない」
「ぼくの母も〈キアラ〉て言うんだよ
でも若くして死んでしまった
ボクが小さかった頃の話しだ
それからはスラムの街で子どもたちだけで暮らしていたんだ
母の記憶はあるけれど、母の死因までは知らない、たしかに病弱者だったような様子だった」
それを聞いて少女はスコットの顔を見つめた
「なるほど、そう言うことか
外部の人間がなぜこの〈ストーム〉に入れたのか、なぜ〈ストーム〉が受け入れたのか
少し気になっていたんだ
もしかしたらネオ・ジオンが目覚めさせたのではなく、キミがトリガーだったのかもしれない」
「どういうこと?」
「もし、キミの母親がここを出たわたしたちのうちのひとりなら、〈ストーム〉が受け入れたのはわからなくはない
名前がたまたまオナジだったわけではない
私にはわかる
キミはわたしたちの子どもなんだろうな」
「よく、そんなまやかしを…」
スコットは少しむっとした
「気になるのなら、ライブラリを見ればいい
協力者は定期的に此処を訪れ、ビデオ・ログを残していた
問題があれば〈わたしたち〉全員と共通認識出来るように
ただ、問題は無かったから見返すことは無かったけどね」
「ビデオ・ログ?」
スコットは複雑な気持ちだった
開けてはいけない母の記憶を、開いてしまうのではなかろうか?
考えるほど、恐ろしくなっていった…