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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第14章 ビデオ・ログ


「こちら側のシートに着くがいい
 ログを再生してみるから
 だが私がここを離れるわけにはいかないから、膝に乗せてくれ」


スコットは言われたとおり、席を譲ってもらい、少女は彼のひざにちょこんと座ると再びパネルの操作を始めた


〈やはり子どもだな、軽いや〉とスコットは思った


「こちら側のパネルは触るなよ、偽装が解除されてしまうぞ
 キミ側のディスプレイに映し出してみるから」


そう言うとスコットの近くのディスプレイにひとりの女性の顔が映る


キアラ?

そうでは無い、もう少し大人びている


〈母さん?〉


ひとつの画面は4分割され、16分割されて細かくなっていく

すべて同じ女性が映っている


「こんなものがあったのか、これ全部母さんなのか?本当に?」


「キミの母親かどうかはキミならわかるんじゃないか?わたしは見たことが無いんだ
 ひとつ再生してみよう」


無作為に選んだ画面にカーソルを合わせる


ひとつの画面だけに切り替わった


画面いっぱいに懐かしい母の顔が映し出せた


お世辞でもなくスコットは〈綺麗だ〉と思った


「0081年4月6日 ビデオ・ログ
 〈船〉に異常無し、妹が1名死んだ
 スリープカプセルの中で眠るように死んでいた、ムーンダスト病だ
 カプセルは殺菌消毒した
 遺体は船のエンジンルームにて焼却した
 また人数が減ってしまった
 外に出た人間も今や私だけとなった
 〈船〉はこのまま永遠の眠りにつくのかもしれないが、それでもかまわないと思うことにする

 そして…

 プライベートログ
 スコットは3歳になった
 仕事とここに来るとき以外、かたときも離れない
 わたしは此処を出て良かったと思っている

 以上、ログ終了」


ピ!と画面は暗転してビデオは終了した



間違いなく母だった


「確定だな、スコットくん」


キアラは笑ったが、スコットの目尻には涙が伝っていた



話す母を見たからだ



遠い記憶の母、キアラ・イアン


まざまざと母の顔が鮮明に見れたのだ


スコットは胸が締め付けられた



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