月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第14章 ビデオ・ログ
言葉が出ないまま母親の死を告げるようなビデオ・ログにスコットは呆然とするしかない
「スコット…、だったな
わたしたち〈オルタナティブ・キアラ〉は多少状況が変わっても、全員の目的は同じだ
〈オリジナル〉にこの遺産を継ぐことだ
〈キミたちの知ってるキアラ〉もそのために進んでいたと思うぞ?
アンタの〈ママ・キアラ〉もな
やることは決まっているんだ
ただし、眼の前には障害が大きい
今まさに地球のすぐ近くでネオ・ジオン軍が小惑星を使った質量攻撃をする模様だ
艦隊が集結している
それに比べて連邦軍は一部隊のみで阻止しようとしている様子だな
かなりの激しい戦場をわたしたちはすり抜けて行かなければならない
覚悟しておいて」
スコットの膝の上に座る少女はパパパパ!と幾つもモニターを展開させ、位置関係、数、コースを表示させた
スコットは画面を見てハッと気持ちを戻すことが出来た
「そうだね、〈キアラ〉!
ぼくたちはまだやるべき事が、
行くべきところがあった
ぼくはなにが出来る?」
気持ちを取り戻したスコットの気張った顔を見て、少女は笑みを浮かべた
スコットにはそれが〈母の姿〉とダブらせているのだった
「案の定小惑星…、コードネームは〈アクシズ〉だな、こいつは少しづつ崩壊しながら進んでいる
おそらく熱核ジェットエンジンを強引に取り付けているからだろう、惑星の表面がボロボロ剥がれていってる
剥がれた岩石も巡航して〈アクシズ〉に付いてきている
我々の〈ストーム〉も岩石で偽装しているので好都合だ
このまま速度を少しづつ岩石群と同期させていこう」
「わかった、完全に同期するまで此処を戦場にできないな、格納庫にぼくの機体が…
〈Gフューリー〉がある!
〈ストーム〉に貼り付かせないよう、
援護するよ!」
「気をつけてね、スコット
作戦行動時間は大気圏突入よりも早いタイミングだ、直前では収容が出来ないからね」
「わかってるよ、じゃあ!」
スコットは走ってコックピットルームから出ていった
「ふふふ、元気になっちゃって!
子どものような男の子に見えていたが、
戦士の血が騒ぐのかね?
やはり〈キアラ〉の子だね」
少女は母親気取りで笑った