
月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第15章 大気圏
出撃前、モビルスーツハンガーでコックピットに入り込む前にダイアナがやって来た
「ダイアナさん、ついに出撃っスね……」
「怯えなくてもいいよ、チャーリー!
戦場はみんな怖いんだから!
中途半端に慣れちゃうほうがミスをするんだ
アンタなら大丈夫さ!」
ダイアナは慣れたように腕を伸ばし、組んだ指をボキボキ鳴らせて柔軟運動をしている
「おれは怖くてたまらねぇっスよ、
操縦はいいンすよ、ギラ・ドーガもうちの工房の製品だしさ、もともとユニバーサル規格なんだから、推力にさえ慣れてしまえば問題ない
でも、戦争はちがうよ、
ぜんぜんちがうよ!
殺意がある敵なんか、相手したことないよ」
「大丈夫、操縦はうちらもプロなんだよ?
とにかく
敵の弾に当たらないよう逃げ回ってりゃいいさ!そうすりゃ生き延びられる!
別に一機も撃墜しなくてもいいって!
ただし予備のカートリッジはたくさん持っておけよ!撃ちまくってりゃ一つくらいは当たるさ
生きてグラナダに戻れれば、またオンナを抱けるよ?キミ好きなんだろ」
ダイアナは笑った
「そんな気持ちで戦場に行ったら、すぐに撃ち落とされちまう」
ダイアナの励ましの言葉はチャーリーには届かなかった
ダイアナはふむ、と何かわかったような顔をすると、ぐいっとチャーリーの首元を掴むと自分の方へ引き寄せた
チュッ
ふたりは少しの時間だけ肌を寄せ合った
「ありがとうダイアナさん、
少しだけ、落ち着いたよ」
「良かったな、続きは戻ってからだ」
「本当に!?」
「その代わり、ちょっと意識してほしいことがあるの!スコッティのことよ!
きっとこの宙域で潜んでいるハズだわ!
彼らと合流しておかないと!
彼らはわたしたちの仲間よ
でも連邦にも、ジオンにも属していないわ
宙域で見かけない機体を見付けたら信号弾を放って!きっと通信は出来ないでしょうから」
「えええっっっ!!!戦闘中に?
そんなの無理っスよ!
自分の事で精一杯だって!」
聞かずにダイアナはその場を離れていった…
「頼んだよ!」
とだけ言い残して
