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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第15章 大気圏


連邦軍のモビルスーツ、ジェガンはあっという間にチャーリーの機体に取り付いた


足元の岩塊を通じてなのか、回線が繋がってしまう


「おいおい、テメェそんなとこに隠れて何やってンだよッッ!! 戦場に逃げ場所なんて無いんだッッ!!

 いや、オマエ敵前逃亡してたンじゃねぇかぁ?

 この、臆病者めッッ!
 皆が必死に戦ってるってときに、テメェはこそこそ隠れてやがったのかぁぁ???

 撃ち殺してやるのはカンタンだが、そんな簡単に終わらせやしねぇぜッッ!!

 デメぇの機体を大気圏から落としてやるッッ!

 ゆっくり、じわじわ、恐怖のなかで
 燃え尽きてしまええええええッッ!!!」



連邦軍のパイロットは圧倒的優位な状況に陶酔していたのだ


彼もまたチャーリー同様に恐怖のなか出撃してきた若者なのだ


チャーリーはたまらずトリガーを引く


ビュン! ビュン! ビュン!とビームライフルが虚しく宙に舞うだけだった


ジェガンはドォォォンンッ!とギラドーガの腕を踏みつける


まるで、抵抗はムダだ、と言わんばかりだ


それでもチャーリーは撃ち続けた

撃ち続けるしかなかった


恐怖はピークに達していた


もう言葉も出ない


それよりクチから心臓が飛び出そうだ


いや、心臓そのものが耐えきれずに破裂してしまいそうだ


その瞬間!


ゴォォォォッッッ!!!とジェガンの機体が火を噴いた!


「!!??」


チャーリーは何が起こったのか理解できない


ジェガンはそのまま全身からショートしたり、小刻みな爆発をおこしていき、ゆっくり崩れ落ちていった


「チャーリー!!!! 無事ッッ???」


その声はダイアナ・ギルスベルゲンだ



どこからなのかわからないが、チャーリーはディスプレイの操作をする気力も失っていた


ドォォン!とダイアナのギラ・ドーガが岩塊にやって来た


「大丈夫なの、チャーリー!!
 応答しなさいって!」


「……だ、ダイアナさん!」


「良かった!」


チャーリーにはわからなかったが、どこか遠くの方からジェガンを捕捉して、一撃で撃ち抜いたのだろう


“すげェよ、やっぱアンタはエースパイロットだよ、ダイアナさん!”


脱力したチャーリーは声こそ出さなかったものの、グラナダ工房イチのエースだとあらためて思ったのだった

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