
月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第15章 大気圏
「キャ、キャロラインさんっ!?」
「どうしたの!コーエン!もう音を上げたの!」
「ち、違います! この宙域の外から物凄い勢いの機体が接近してきます!ギラ・ドーガ4機!」
キャロラインも速度を落とさず横目でディスプレイを確認する
何故かキャロラインにはこの追跡パターンと異常なスピードが気になった
「コーエン! この感じ、覚えてない?
前にも有ったでしょう!
アガルタの時だけじゃなく、その前のフォン・ブラウンでもこんなの遭ったわよ!
同じ奴らじゃない!?」
「そ、そういえばやたらしつこい部隊がまとわりついて来てましたよねッ!?
フォン・ブラウンでは肩にヘンな塗装したドーベン・ウルフが!」
「ええ、たぶん同じ部隊よ!チャームフューリー部隊に執着してるのよッ!!
あんなの相手にしてられないわッ!
向こうの方の大きな隕石で様子を見ましょう」
チャームフューリーは様々な障害物を盾にしながらジグザクに飛ぶ
やかて大きな岩塊まで辿り着くと、ダミーバルーンを射出して、浮遊物の多い宙域へ促した
「騙されてくれればいいけれど!」
「半分はダミーを追いました!」
「すぐにバレそうね? 岩塊の隙間を見つけたわ! あそこでやり過ごしましょう!」
チャームフューリーは速度を落とし、逆噴射をして一瞬のうちに岩の裂け目に潜り込んだ
「余計な排熱を止めます! 中が熱くなりますので我慢して下さい!」
「了解、任せたわ」
近くを何者かの影が通り過ぎていく
ギラ・ドーガだ
岩塊に降り立つことなく、どこかへ行ってしまった
「当分哨戒を続けるでしょうね、
こうなったら根競べね……」
キャロラインは今のうちに喉の渇きを潤しておく
そしてヘルメットを脱ぎ、そのままパイロットスーツの気密ファスナーを下ろしていく
「きききき、キャロラインさんッッッ???」
「人を痴女みたいに言わないで!
これからもっと熱くなるわよ、
アンタも汗をかく前に脱ぎなさいッ!」
「は、ハァ……」
ふたりは肌着姿にまでなって、機内の照明も落とす
できるだけ余計な電力を使わせない
危険な状況だが、狭いコックピットに露わなキャロラインが近くに居ることにコーエンは意識せざるを得なかった……
