月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第16章 ドミニク隊
コックピット内のパイロットの姿を見たキャロラインは次の太刀をためらってしまった
脚部のスラスターを全開、機体を後退させた
手負いのギラ・ドーガは2機を相手に怯むこと無く、まだ戦おうとしている
キャロラインたちが後退したことにより、スコットが前に躍り出た
とどめをさすためビームライフルを放つ
コックピットが剥き出しのドミニクは焼かれないように腕を交差させて胴体を守るが、ビームライフルの灼熱が自身の肉体を焼いていく
胸元や腕は火傷の痛みはあるが感覚が麻痺していた
スコットがロックオンし、最期のライフルを放った瞬間、どこからともなく現れた別のギラ・ドーガに阻まれた
そのギラ・ドーガは上半身が無かった
コックピットが露出したギラ・ドーガ
サフィーネだ
すでに人型ですら無くなった機体を無理やり奮い立たせ、ドミニク機とスコット機の間に割り込んできた
「姐さんッ!」
「サフィーネッ!?」
後退していたキャロラインは十分な間合いを取ってビームサーベルを抜き、半壊していたギラ・ドーガを斬り捨てた
ポーンと生身のサフィーネの肉体が宙を飛ぶ
慌ててドミニク機が彼の身体に腕を伸ばす
敵の前で隙を作ってしまったドミニク
スコットはビームライフルを放てなかった
ドミニクはギラ・ドーガの指に包まれたサフィーネの身体を拾い上げるとコックピット内にねじ込んだ
「サフィーネ、お前……」
「姐さん、また会えたな……隙をついて姐さんを守ろうとしたんだがよ?
俺のほうが助けられちまったな……」
「お前さん、バカだねぇ……」
ドミニクは戦意を喪失して、敵に背を向けた
コーエンとスコットはとどめはささず、その場を離れることにした
ドミニクの機体も限界を超えていた
このまま、この岩山の中で朽ち果てるだけだろう
キャロラインは女が男を選んだ姿を見て、何も言い出せなくなってしまった
自分があのような立場でも同じことができただろうか
自分を何度も守ってくれたコーエンなら、
私も同じことが出来たかもしれない…
キャロラインは同じコックピット内のコーエンの横顔を見つめていた……