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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第1章 月面基地グラナダのテストパイロット

月面都市「グラナダ」は下層に降りるほど治安の悪い闇の街となっていた


庶民よりもさらに下の地下世界


光の届かない闇の街「グラナダ・テイル」


街の尻尾


いつ切り捨てられてもおかしくない、最下層の街


治安も、衛生面も、最低の暮らし


スコット・イアンはそんな暮らしから抜け出したくて危険なテストパイロットの仕事をしていた


まだ15歳だが学校にも行けず、かといってグレて非行に走るほど生活の余裕が無かった


家から飛び出したものの行く宛も無く、

汚い路地裏で野垂れ死ぬのを待っていたとき


怪しげな男にスカウトされた


男は兵器企業の営業マンだった


「死んでもいい人間を探している、

 お前が死んでも金は出ないが、仕事をこなせば金は出す、どうだ?来るか?」


こうしてスラム街に暮らす少年スコットはアナハイム・エレクトロニクス社の孫請け工場のテストパイロットの仕事を手にした


試験飛行の途中で爆発したり、片側のエンジンがトラブルを起こし高速で岩肌に激突しながらも

彼は一年経っても、まだ生きていた



同僚のチャーリー・ベナンテとは面識は無かったものの同じような境遇でこの街で生まれ、同じように連れてこられた


二人は「いつ死んでも問題がない」消耗品のパイロットだった


工場に隣接したアリの巣のような居住地


彼らは明るい「グラナダ」の都市へ出ることも許されず、この職場の中の区画だけで生活しているのだ


寮の暮らしは簡素で嗜好品も持ち込めない


彼らの楽しみは寮の入口エントランスにある食堂だけだ


仲間のテストパイロットたちが仕事を終えて雑談していた


「スコット、やっぱりさっきのは新しいジオンの私設軍隊だったらしいぜ」


「チャーリー、また主任に聞いてきたのか?
 遂にギラ・ドーガが実戦投入か……」


「俺たちの仕事には割り振られなかったけど、ああいうクラシックな機体に当たりたいもんだね~」


ギラ・ドーガ

最初のモビルスーツの末裔機体

新作でありながら過去の意匠を取り入れた安定感のある機体はテストパイロットの中でも評価が高かったという


「俺たち底辺パイロットにまわってくるわけないだろ? どぉせ乗らされるのはいつ爆破してもおかしくないような実験機だけさ!」


底辺の階級でも少年は生き延びていけた


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