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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第5章 委員会

「……自分からすれば、今回のことは事故ではなく、攻撃を受けたと捉えています

 我々も防戦一方でした

 あの場所から脱出するだけで精一杯だった


 彼ら……、新しいジオンなんでしょう?


 彼らに追求しているのですか?


 こちらは攻撃を受け、機体を失い、パイロットも失っているのにッ!」



「……スコット君、今回のことは我々は事故だと捉えている


 お互いに触れてはならぬ領域に接してしまい、警告を発した威嚇行為だとね

 事を大きくするつもりは無い


 キミは戦争でも始めたいのかね?


 もっと被害者を増やすことになるぞ?」



「……そ、それは……」



「……仲間を失った気持ちはわかる

 それが親しい間柄ならなおさらだ


 だがその悲しい事故をこれ以上広げてしまってはならない


 今回開かれた委員会もそういう事だよ


 気分を害したのなら許して欲しい


 そこで、これ以上事を大きくしないためには今後色々と改善しなくてはならないことがある


 この月面基地を平和におさめるためにね


 とにかくあの訓練に使われていた工場プラント、あそこは無期限に利用不可とする


 無用な紛争は避けたいからね


 また我が社の顧客はいまとても大事な事を控えているらしい

 相手もこの時期に無用な詮索は喜ばない


 話題をここから広げないほうが賢明だと思うが、どうだろう?」



スコットは眼の前の男たちを睨みつける



「……無かった事にしろ、と?

 これ以上関わるな、という事ですか」



「……我々は戦争を回避したいだけだよ

 この月面基地グラナダシティには何百万人という市民の生活がある

 また、ここだけでなく月の反対側フォン・ブラウン市まで火種が飛んでしまったら?


 キミは若いが子供ではない

 立派な大人だ、我が社の大切なスタッフだ

 月の人間を守る、それはキミ自身を守ることでもある
  
 我が社は事故にあったキミも守りたい」


スコットは無念だった


抗うな、と釘を刺されたのだ


ヴァレリーたちに申し訳がない


このまま忘れろ、と言われたのだ


殴ってやりたいのは眼の前の男たちではなかった


無力な自分自身だった…


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