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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第5章 委員会

スコットはそのまま元の職場、アナハイムの試作機の工房へと向かった


事務所には行かず、格納庫のほうへ足を運ぶ


様々な試作機が並んでいる


どこかで見たようなモノアイ仕様のザクっぽいものから、V字アンテナにツインアイのような粗悪なコピー品が立ち尽くしている



工房スタッフの交代時間のようで数人の作業衣のスタッフがだらだらと片付け作業を終えて立ち去っている


誰もスコットのことを気にかける者は居ない



工房の奥の方まで進んでいくと、一般から隔離されたブロックがある


こちらは一般試作機とは異なる秘密裏に開発された機体が並ぶスペースなのだが、その一角にボロボロに被弾したままの〈ブリジニティ〉が放置されていた


かつての愛機と再会する


見た目はボロボロだが、一応整備されているようだ


てっきりバラバラに解体されてしまったものだと思っていたが拍子抜けだった


データ解析だけ抜き取って、機体はこれからなのだろうか



コックピットを覗くと様々なケーブルが繋がれ、データを転送したままの状態のようだ


起動こそしていないものの、スリープ状態のようで全周囲モニターこそ暗転しているがいくつかのウィンドウ表示が点滅したり、転送先のデバイスの表示を開けたまま閉じられていない


……まだ、動くんだな……


スコットは解体待ちの愛機に別れを告げ、工房を後にした


ちょうどクレアたちが勤務するオペレーターたちの訓練施設の前を通りかかる



ほとんどがあれから閉鎖されたままなので人員はまばらだ



エントランスのソファーに座り込んで考えていた



きっと、もうここには居られないんだろうな



漠然と退社することを考えていた



良くしてもらったクレアに最後に会っておこうか


いや、迷惑をかけてはいけない


黙って離れるべきだろうな



スコットが立ち上がろうかと決めかねていると、通路の向こうから人影が現れた



明るい照明のところまでやってきた



クレアだった



「…スコッティ? 待っててくれたの?」


クレアは恥ずかしそうに笑った



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