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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第1章 月面基地グラナダのテストパイロット

翌朝の訓練時間


午前中のシミュレータ機での操作訓練の時間


スコットがシミュレータ部屋に入ると、チャーリーとダイアナが既に訓練を始めていた


スコットも無言で擬似コックピットのシートに座る


“なんだよ、朝から”


スコットはチャーリーと同じく今月かかりっきりになっている試作機の模擬訓練


ダイアナは自身に与えられている大気圏突入の新型機の操作訓練を行っていた


ダイアナはまだ若い少女のような雰囲気たが、実はやり手の優秀なテストパイロットだ


スコットたちチームのメンバーはおもに量産機の試作機を担当させられているが、

ダイアナはいつもクセの強いカスタム機やエース機を担当している


それなりの技量が無いと注文の複雑なチューニングを扱いきれない



それだけダイアナの技量は目を見張る者があった



スコットの当面の目標は彼女のポジションだ



カスタム機の担当を任せられるテストパイロット



だから多少の無茶もするし、相手が求めてくるよりさらに上回るほどのボキャブラリーを持ち得ないと任せてもらえない


スコットはいつものやり慣れたシミュレータの訓練を数回こなして小休止することにした


シミュレータマシンが空いたので入れ替わりに他の同僚が乗り込んでいく


訓練ルームの隣の廊下にある休憩スペースで苦いコーヒーを飲んでいると女性クルーから声をかけられた


マシンのオペレーターを担当しているクレア・サンデリアだ


三十代の落ち着いた女性で、何回かシミュレータのオペレーターを組んでもらったことがある


だがスコットはクレアが苦手だった

いやスコットは女性が苦手だった


「調子はどう?スコッティ」


「………、シミュレータマシンは毎日のことですから…」


「昨日の訓練のデータを見たわ、あの機体での加速度は最高記録だったじゃない」


「……たまたまですよ」


スコットはグイとコーヒーを飲み干した

だが心のなかでは「やったぞ、見てくれている人も居るんだ」とほくそ笑んだ


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