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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第8章 月の街「アガルム」

鉱山の街〈アガルム〉は屈強な男たちが多く見かける街だ


彼らの仕事は地下資源の採掘


地下には鉄、ニッケル、などが採られるが大半はレゴリス砂礫だ


そして最大の鉱脈はチタンである


特に月で採れるチタンは「ルナチタニウム」と呼ばれ、ルナチタニウム合金はそのままガンダリウム合金の主成分として重宝されていた


だが数年前、グリプス戦役の頃に大量消費されたルナチタニウム合金は一気に資源が枯渇

この時代のモビルスーツ量産機、連邦軍のジェガン、ネオ・ジオン軍のギラ・ドーガなどはルナチタニウム合金を採用することが困難となり、「チタン合金セラミック複合材」が代用せざるを得なくなっているのが現状だった






宇宙移民の生活の中で採掘はとても重要な資源であるが、火星の小惑星アステロイドベルト群にはなかなかチタンが少なく、月の採掘場は重要な場所となっている



そのため採掘都市として栄えている「アガルム」の街は月の外縁部の立地もあって戦争の「中立地帯」として両陣営からも手を出せない


クレア・サンデリアの助言により三人はこの街へ逃げ込んでいたのだ


だが、その手配がまわってくるのも時間の問題かと思われる


三人はみすぼらしい身なりに着替え、古くから住み着く子供の作業員のように振る舞いながらにぎやかなテントの露店で食事にありついていた



「……これ……なんの肉かしら?スコッティ」



「さぁ…、考えないほうがいいんじゃない?」



「……こんなもの食わなくても〈ストーム〉に戻れば合成ゼリーがいくらでもあると言うのに…、お前たちは無駄が多いな…」



「キアラ!あんなのばかりじゃ駄目よ!栄養価はあるけど食事ってそれだけじゃ無いのよ!」


キアラと略称された幼い少女〈オルタナティブ・キアラ〉は面倒臭そうに正体不明の肉が入ったスープをたいらげた



テントの露店はずらりと並び、数百人とも呼べる民衆で賑わっていた


重機を扱う男たちが多いが、それらを買い求める商社の人間や、男たちに愛想をふりまく派手な女たちも入り混じり活気に満ちている


「グラナダのスラムとはまた違う雰囲気だな」
とスコットは思った…



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