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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第8章 月の街「アガルム」

簡易宿泊施設はおもに日雇い労働者たちが使う汚いホテルだ


キアラは5階の窓から騒がしい路地を見下ろす


夜が遅くなるに連れて騒がしさも一層激しくなる


スコットとクレアは備え付けのテレビに釘付けだ


ちょうどグラナダの事件を報道していた


「なんてことだ、あの弔い合戦を式典って言ってる!?」



テレビでは事故死したパイロットの為に慰労祭が執り行われたかのように伝えている


「報道規制されたのね……、もともとグラナダのアナハイムも〈キサンドリア〉寄り……、要はネオ・ジオンと密着しているのだもの……

 敵というより、内輪もめのようなものね」


「じゃあ、ボクたちも手配されてないってことじゃないのか?」


ニュースは切り替わってテロ事件が発生したことを報道している


その関係者として……



「……おいおい、ボクらがテロリスト扱いされてるじゃないかッ!?」


「戦闘は無かったことになっても、私たちの帰る場所は無いみたいね……」



クレアもため息をついた



窓の扉を閉めたキアラがテレビの前を横切り、二段ベッドの上に上がっていく


「ネオ・ジオンはまた〈ストーム〉を奪取しに来ると思う……

 ネオ・ジオンだけじゃなく、連邦軍も、ね?」


オルタナティブ・キアラはこれから始める争いを楽しもうとしているようだ



「キミのあの巨大な兵器は連邦軍にも知られているのか?」



「もちろん、そうよ」


「建造したのはアナハイム社なんだろうけど、そのクライアントは誰なんだ?
 ネオ・ジオン?」


キアラは二段ベッドの上段にゴロリと横たわり、話しを続けた


「……トランキュリティ軍とアモルフィス社よ」



スコットはその名前を聞いてもピンと来なかった



「そんな組織、あったっけ?」


クレアが代わりに答える



「トランキュリティ軍は企業連合軍よ、いろんな会社の寄せ集めの軍隊

 それぞれに派閥や力関係があって、統制がとれていないわ

 アモルフィス社はそのうちのひとつの企業に過ぎないわ

 アナハイムと同じ兵器企業、要はライバル会社ね

 スコッティが知らないのも無理は無いわ

 だってそのふたつは地球の組織ですもの」



「……地球」



スコットは写真でしか見た事が無い青い地球を思い出していた…


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