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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第9章 チャームフューリー部隊


マティスとルーカスの機体がクレーターの外縁部で蒸発した同じ頃


部隊の隊長マーティンは部下のキャロラインに機体を街の外れに隠させているあいだ、先に単独で居住ブロックのほうへ潜入していた



あごひげをさすりながら、建物の陰にかくれて様子をうかがう


地表から強化ガラスが盛り上がり、中の様子を覗き見れる


街を丸ごと半球体のドームがおおっている


中にはビルと幹線道路が見える


ここは自治政府を構える中央ドームだ


ドームを背にして砂地の向こうには駐屯地の宇宙港が見える


大きく開口した場所からはモビルスーツだけでなく、戦艦も出入りする


今は物静かな様子で港から何かが出てくる様子も無い


街の様子も宇宙港の様子も穏やかだ


特に緊迫した雰囲気も無いため、マーティンは〈こちらはハズレのようだな…〉と思った


報道にあるような若いテロリストが潜伏しているのなら、港のハッチは閉ざされているだろうし、街の道路も警官が動き回る様子が見られるはずだ


〈若いテロリストの報道はあったが、そのニュースもどこまでが本当か、怪しいもんだ〉


〈アナハイムのテストパイロットとは言え、単独で基地を攻撃する理由も無いだろう

民間企業とはいえ、アナハイムは連邦軍とも密接な関係なのだから…〉


〈やはりネオ・ジオンか、もしくはその支援団体か……、仲間割れか……それとも重要機密を知ってしまったか、だな〉


〈フォン・ブラウンの命令でここまで調査に来てみたが、本部のほうもカタストロフマシンの情報は掴んでいた様子だ……

 ここで俺たちが生け贄のような扱いをされてはかなわんな、

 適当に証拠の画像ぐらいは抑えておいて、早々にズラかるか?〉


〈キャロラインが隠蔽工作を終わらせたらこちらに合流して街の撮影を始めよう…〉



マーティンはカタチだけの報告書を提出出来ればそれで良かった


危険な秘密兵器のオトリになりたくはない


マーティンは端末を開くと位置情報を確認しながら今の経過時間を確認していた


街のほうへ端末を向けるとディスプレイの画面に撮影用の画像が映し出される


端末の画面に意識を集中し過ぎて、背後の人影にマーティンは気が付かなかった


マーティンの背後には髪の長いミドルエイジの子供が立っていた


女の子だ


少女はニヤリと笑った

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