月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
「……いったい、何なのッ!?」
キャロラインは左の腕を押さえながらビルの隙間に隠れていた
マーティン隊長の命令でモビルスーツを砂の中に埋めて隠すと、慌てて先行した隊長を追いかけた
ドームの近くまでたどり着いたとき、ふと見上げると女の子が座っていた
「え?」
女の子はヘルメットも付けずに口元のエアーだけを装着している
咄嗟に身を隠す
その動きで第一射を偶然かわせた
〈撃ってきたッ?? 子供が??〉
砂の上に放置された古いコンテナボックスに隠れながらドームのほうへ近付く
そこで見たのは砂の中に埋もれつつある隊長マーティンの亡き骸だった!
〈あぁ、嘘と言って……!〉
キャロラインは親と同じくらいの上司マーティンを異性として意識していた
彼には妻も子供も居て、娘は自分とそんなに歳が変わらないと言っていた
だから
この人はきっと駄目なんだろうな
と思っていた
相手にもされないだろう
でも
若い男には無い魅力があった
落ち着いていて、安心感がある
いつもわざとらしく彼の腕にしがみつき、胸を押し当てて意識させたりもする
意味もなく手を握ったり
それでも彼は迫ってきたりもせず、ましてや冷たい態度をとるわけでもなく
やさしく甘えたの娘をあやすように頭をポンポンと撫でるのだった
他の男たちが自分にアプローチしてくる事もあるが、マーティンがそばにいるおかげで軽はずみな行動はしてこなかった
おかげでチームの一員でも、気おくれすることなく自分らしさを前に出せた
マーティンのおかげだと思う
その敬愛する男性は
カッと目を見開いたまま眉間に穴を開けられて砂の中に埋もれていた
キャロラインはとてつもない危機感を察して、夢中で掛けていった
背中のほうから子供が呼びかけてくるような声が聞こえてくるが、立ち止まらずにひたすら足を動かした
きっと、足を止めたら死ぬのだろう
とにかく
とにかく、キャロラインは走った
そして何とか地下へ通ずるエレベーターまでたどり着き、夢中で下層へのボタンを押した
息が切れる
いつの間にか左腕を撃たれていた
そしてエレベーターの中で座り込み、キャロラインは大きな声を出して
泣いた